世界で活躍するためには専門性が欠かせない

高橋 ただ一方で、理系はまた状況が違うと思います。河合さんの本にも書かれていますけど、グローバルで通用するためには専門性が必要だと思います。日本人で唯一それができるのは、技術を持つ人たちなんですよね。

河合 技術は言葉の壁を超えます。

高橋 モノづくり人たちは、大学で基礎理論も習ってきて、それが海外でもそのまま使えます。どこに行ってもモノはありますからね。

河合 研究室も国際化していますよね。

高橋 欧米では、人事、財務、マーケティング、最近だと知的財産の分野でも、それぞれが体系的な専門分野として大学で教えられて、それが社会で使える形になっていますよ。でも日本だと、技術以外はジェネラリストですよね。

 私は、最初に理系の技術畑だったことが、とても良かったと思っています。グローバルに出るときのハードルが低いから。日本で受けた航空工学の授業も数式が基本の理論です。それは、プリンストン大学の工学部で授業を受けても、基本的にはほとんど変わりません。

河合 語学の壁があることが、留学中それほど苦にならなかったとおっしゃっていましたよね。

高橋 ならない。なぜなら式がわかればいいから。唯一、評定がBの科目がありましたけど、それは交通政策学でした。交通政策について本を読みながら学ぶ授業があって、そこには語学のハンディを感じましたね。でも、数式が共通言語になる科目では、ほとんど言葉のハンディがありませんでした。

 職人の世界、たとえば料理人もそうですね。だからこそ、そういう世界では世界で活躍する日本人が多いと思います。理系のように専門性が確立されている世界は、グローバルのギャップが少ないんですよ。

 一方で、いわゆるジェネラリスト的な文系職が一番苦労します。でも文系の分野であっても、海外に行くと「あなたの専門は何?」と聞かれますよね。マーケティングです、財務です、と言えなければいけない。たとえいろいろできたとしても、柱が1個なければグローバルのキャリアになりません。

河合 大学生を見ていると、理系の学生のほうが長時間勉強していますね。文系の学生は授業の数も少ない。アルバイトをしているのか、遊んでいるのかわかりませんが、授業に来ないこともあります。そういう意味から、差が出るのも当たり前かなという気はします。

高橋 ところが、実際に社会に出て、どちらの給料が高くなるかというと、日本は文系のほうが高くなることが少なくない。文系が進むような業界、たとえば金融もそうですが、もともと給料が高いわけです。

 そもそも、日本がグローバルで通用しなくなってしまった要因となる、規制や政治上の仕組みをつくってきたのは文系出身者です。日本のグローバル化を妨げてきた最大の原因は文系出身者で、日本のグローバル化を推し進めてきたのはエンジニアなんですよ。

 日本のエンジニアは日本のグローバル化に貢献したが、日本の事務系が日本のグローバル化を妨害してきたというのが、私の説です(笑)。

河合 そんなこと言って大丈夫ですか?(笑)

高橋 もちろん、ある部分に限られますけど、理系出身者としてはしっかり伝えたい。