ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
田中均の「世界を見る眼」

「3つの要素」のバランスで姿を変え行く世界
構造変化の著しい東アジアでこれから起きること

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第33回】 2014年6月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

ウクライナ問題にも顕著に表出
世界の構造変化をもたらした三要素

 世界が大きな変動期にあることは、このコラムでも度々述べてきた。その変化が一層明確となってきた。

 まず、相対的な国力のバランスの変化である。1990年に冷戦が終わった時点、先進民主主義国のGDPは世界の7割を超えていたが、それから30年が経過した2020年には、5割を下回ると想定されている。1990年時点で日本は世界のGDPの14%を占めていたが、それは2020年には6%に下降し、中国が15%のシェアを占めると予想されている。日中大逆転である。

 第二の大きな特色は、国際的な求心力を生むイデオロギーが消滅し、国内のナショナリズムが著しく台頭してきたことである。

 世界の国力のバランスの変化と、ナショナリズムの台頭は、世界を不安定化させる要素であるが、第三の特色であるグローバライゼーションの結果の経済相互関係の拡大は、世界の秩序を安定化させる効果を持っている。

 これからの世界はこの3つの要素のバランスによって、姿を変えていくのだろう。その例として、ウクライナの情勢を見てみよう。ウクライナの現状を変化させ、ロシアがクリミアの編入に走った背景には、ロシアの強いナショナリズムがある。

 ロシアは帝政時代やソ連時代を通じて、極めて強固な大国主義を標榜する国であったが、1991年のソ連邦崩壊後、国力の衰退と共に大国の座から滑り落ちた。

 ソ連邦を構成していた国々やソ連圏にあった東欧の諸国は、なだれを打ってEUやNATOに取り込まれていった。ロシアにとってみれば、これ以上西欧社会が旧ソ連の空間を侵食してくることは耐えられないということであろう。6割以上の人口がロシア人であるクリミアの編入に走った背景には、歴史に対する非常に強い思い、権威の回復に対するロシアの強い思いがあるのだろう。

 同時にロシア自身は、ウクライナ東部や南部への軍事的侵攻は、西側との関係でデッドラインを超えるという認識は有しているのだろう。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

「田中均の「世界を見る眼」」

⇒バックナンバー一覧