あなたの会社には「経営に資する研修」はありますか?

新入社員研修に始まり、スキルアップ研修、階層別研修、コンプライアンス研修、マネジャー向け研修…など、企業内では様々な研修が企画、実施されている。だが、果たして社員たちはほんとうに学べているだろうか?そして、研修で学んだことを職場・現場での成果につなげることができているだろうか?

企業内で自社にフィットした社内研修を企画立案し、実施・評価していこうとする方のために書かれた研修開発の入門書、『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』から5つのテーマに絞って、研修開発担当者が知っておきたい基本的な考え方を紹介する。(構成/井上佐保子)

 「部長、研修って、そもそも何のためにやるんですか?」

 部長に思わずそんな質問をぶつけたのは、つい先月、人材開発部に異動してきたばかりのA子だ。社内の研修開発を担当することになったA子は、最初の仕事として「入社3年目社員向け研修の企画立案と実施」を任されることとなった。

 営業部でトップとまではいかないまでも、配属以来、支店では常に上位の営業成績をおさめてきた入社8年目のA子にとって、人材開発部への異動は青天の霹靂だった。同期からは「A子は後輩向けに勉強会を開いたりしていたし、体育会系で面倒見が良かったから目をつけられたんじゃない?」などと言われたが、営業現場からいきなりの異動は納得がいかなかった。

 しかも、A子は研修に関してもあまり良いイメージを持っていなかった。「入社3年目研修?忙しい時期に全国の支店から同期が研修所へ召集されて、朝から晩まで研修講師の講義を聞かされた上に仕事に直接関係ない内容で、正直、退屈で居眠りしちゃった講義もあった。同期と久しぶりに会えたのは良かったけど、現場を離れて1泊研修なんて、単なるお金と時間の無駄としか思えないわ…」というのが、3年目研修に対する印象だった。「結局、仕事なんて、仕事をしながら先輩や上司からのOJTで学ぶものじゃないのかしら」。冒頭の部長に対する言葉も、そんな思いから思わず口にしてしまったのだ。

 部長はA子の言葉を聞き、黙って席を立った。そして、おもむろに書棚へ近づき、1冊の本を取ってA子に差し出した。「これ、読んでみるといいよ」。その本のタイトルは「研修開発入門」だった…。