国や政府機関などが加盟する国際的な自然保護団体であるIUCN(国際自然保護連合)は6月、ニホンウナギを絶滅危惧種(レッドリスト)に初めて指定した。3段階ある絶滅危惧種で上から2番目、トキやジャイアントパンダと同じカテゴリーに分類された。漁獲量や稚魚(シラス)の量などのデータから、3世代30年間の減少量が50%を上回ったと推測されたからだ。
ウナギは供給のほとんどを養殖に頼り、養殖には種苗となるシラスが欠かせない。ところが、このシラスが激減。過去30年間で漁獲量は90%減少し、成魚の漁獲量も1981年には1920トンあったが2011年には229トンに減っている。
ウナギの実態をめぐる数値には謎が多い。マリアナ海溝で生まれ、日本を含むアジア各国の河川に泳いでくること以外に分かっていることは少ない。シラスの段階でどのような餌を食べ、どんな環境で生活しているか。さらに正確な資源状態や、養殖用のシラスの流通経路など、不明なことが多い。
シラス密漁は儲かる副業
シラスは専用網さえあれば素人でも密漁ができ、高額で売れることから「昔から水産関係者や、時には反社会的勢力の割の良い副業となってきた」(養鰻業界関係者)。水産庁は、漁業者や養殖業者にシラスの流通経路の報告を義務付けたり、養殖池での生産量を制限するといった対策を始めているが、すぐに効果が出るわけではない。