FIT見直しの背景にある
電力コスト上昇への危機感
日本で再生可能エネルギーの導入加速化が政治的にも声高に叫ばれ始めたのは、東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発電所の被災と事故が契機だ。その後、2012年7月に再生エネの「固定価格買取制度(FIT)」が施行された。
しかし、政府は早くもその大幅な見直しに着手するようだ。FITの見直しに関しては、本年6月24日に閣議決定された『「日本再興戦略」改訂2014』(いわゆる新・成長戦略)にも、その方向性が記述されている(資料1)。
<資料1>
その背景には、経済界を中心に電力コスト上昇が現実味を帯びていることへの強い危機感がある。電力中央研究所・朝野賢司氏の試算によると、2013年度末までに買い取り対象として認定された再生エネ設備(FITが始まった2012年7月~2014年3月に資源エネルギー庁が認定した6864万kW)が今後稼働すると、消費者が支払う再生エネ賦課金は年間1兆9000億円、買取期間20年では総額38兆円で国民一人当たり38万円の負担になるとのこと。
エネ庁は、原子力発電所の停止による2013年度の追加燃料費を3兆6000億円と試算しているが、その半額を毎年払い続ける計算になる。
もっとも、4月11日に閣議決定された「エネルギー基本計画」でも新・成長戦略でも、再生可能エネルギーの積極的な推進が謳われている。まさに「再生可能エネルギー源の最大の導入の促進と国民負担の抑制を最適な形で両立させるような施策の組み合わせ」とはどのようなものなのかが、当面の議論の焦点になっていくはずだ。