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医療・介護 大転換

画期的な「地域包括診療料」の創設
「臓器別医療」から「全人的な医療」へ

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第3回】 2014年7月30日
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 本連載では、日本の医療・介護制度が大転換期を迎えていることを紹介してきた。具体的には、医療の役割が「治す医療」から「支える医療」へ、「病院完結型」から「地域完結型」へ、「医療」から「介護」へ、「病院・施設」から「地域・住宅」へといった転換だ。また、そのために欠かせないのが「地域包括ケアシステム」の構築だと述べてきた。

 さて、医療の現場は、3つに分けられる。入院医療と外来医療、それに在宅医療(訪問診療)である。前回は入院医療の改革を論じたが、今回は外来医療に目を向けたい。

「地域包括診療料」が新設
介護保険、健康・服薬管理も診療内容に

 入院医療では、新たに介護保険の新戦略、地域包括ケアを導入したが、外来医療でも地域包括ケアの考え方が加わった。

 それが、「地域包括診療料」である。これまでの診療報酬の体系から大きく逸脱した新たな改革の象徴となる画期的な制度である。一体、何が画期的なのか。

 従来の医療行為とは違う“新たな診療内容”を算定条件に加えた。その診療内容というのが、「介護保険に係る対応」、「療養上の指導」、「服薬管理」、「健康管理」、そして「在宅医療の提供及び当該患者に対し24時間の対応」等である。

 「介護保険に係る対応」を挙げたのは、医療従事者に介護保険を理解するだけでなく、その制度に入り込むことを求めたからだ。「退院すればもう関係ない。後は介護関係者にお任せ」という現行の医療関係者では、この報酬を得られない。外来受診に来た患者に介護保険サービスについて聞かれたら応えねばならない。

 「健康管理」も新しい考えだ。「どう、元気?」「体調に変化はない?」と会話しながら、健康状態を判断する。病気を「治す」だけでなく、日々の暮らしを順調に送っているかを判断してアドバイスするのは「支える」医療である。暮らしを支えるために必要なのが健康管理。介護関係者の仕事は、暮らしを支えることだから、医療もその世界に係るよう要請した。「治す」ことが医療行為であり、だから報酬を得られる――という旧来思想の否定につながる。画期的な内容である。

 「服薬管理」も初めての内容だ。「患者が服用しているすべての薬を把握せよ」ということになる。すなわち、患者がほかの治療で通っている医療機関から出ている薬を含めて、全部の薬をきちんと管理することを指す。

 一見すると、院内処方を奨励しているようで医薬分業に反すると批判されかねない。だが、厚労省は「他の医師が出している薬を把握するのは難しいことではない。患者がもらう薬を分かっている薬剤師と連携すればできること」と、反論している。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

「医療・介護 大転換」

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