岸見 自分の人生にうすらぼんやりした光を当てて、先が見えるような気がしてしまうんでしょうね。

『嫌われる勇気』には自分が言いたかったことがすべて書かれている」と堀江さん。

堀江 なにが起こるかわからない現状を、「なにが起こるかわからないからワクワクする」と感じるのか、「なにが起こるかわからないから怖い」と感じるのか。この違いは大きいと思います。『嫌われる勇気』の言葉を借りれば、「連続する刹那を生きる」ということになるでしょうか。わかりもしない未来に怯えていることが、いかに人生にとって無駄なのかということを伝えたくて、僕はよくバカな経営者の話を人前でするようにしています。

岸見 たとえば、どんな方がいらっしゃるんですか?

堀江 札幌に飲食店などを経営している友達がいるんですけど、先日、LINEで未公開株詐欺の典型的な文章を送ってきて、「堀江さんこれどう思います?」って聞いてくるんですよ。いや……これ典型的な詐欺でしょって(笑)。それを僕に聞いている時点で、半分くらい信じていると思うんですよね。それだけバカだということですよ。そんな男が何社も経営している、世間的に言えば「成功者」なんだから、恐ろしいことですよね。

古賀 でも、そういうものに食らいついてしまうほど後先を考えないところがあるからこそ、成功を掴むことができる側面があるということですね。

堀江 そうそう。あと、カナダのバンクーバーで大成功しているジャパニーズレストランの社長もバカなんですよ。日本で寿司屋チェーンを経営していた親父が病気になってしまい、急遽20代で会社を継ぐことになったんですが、魚の仕入れ方法もわからず、はじめはスーパーで寿司ネタを買って握っていたそうです。そんな素人が、なぜかバンクーバーに出店しようと言い出して、よくわからないまま、とにかく成功してしまった。

古賀 リスクを考えないからこそ、成功したということでしょう。たしかに世間的に言ったら「バカ」ですが、「バカ」でなければ成し遂げられないものもあるのだと思います。