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China Report 中国は今

上海福喜食品の食肉不正を暴いた
中国「潜入報道」のいま

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第157回】 2014年8月1日
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 7月23日、日本で中国の食品工場の内情を暴いた衝撃の映像が流れた。

 床に落ちたチキンナゲットを再び生産ラインに戻し、青く変色した肉も使い続ける。本来廃棄されるはずの原料が生産ラインに投入される。「これ鶏の皮じゃないか」との問いに「混ぜればうまいよ」と返す従業員。

 やられていたのは消費期限の改ざんだけではなかった。上海のテレビ局の「東方衛視」は、管理の及ばない無法地帯と化した食品加工の現場を赤裸々に映し出した。実はこの番組、テレビ局の記者が従業員になりすましての3ヵ月にわたる潜入取材がもたらしたスクープだった。

 きっかけは、テレビ局に寄せられた上海福喜食品の元従業員からの告発だった。「この工場には問題が多すぎる」と、元従業員は記者らに訴えた。

 しかし、上海福喜食品と言えば、世界17ヵ国に50工場、肉類加工業では世界最大規模とも言えるアメリカのOSIグループの子会社だ。当時、記者たちは「こんな先進的なグローバル企業で、そんなことあり得ないだろう」と半信半疑だった。

 だが、この元従業員は証拠となる二冊の、裏と表の帳簿を持っていた。裏帳簿の存在は有力な証拠になる。テレビ局ではこれを機に取材班が編成された。

 しかし、工場責任者に正面から直撃取材したところで何の情報も得られないのが中国だ。さらなる有力情報を得るために、彼らは「潜入取材」を断行した。

大量の虫が湧いた小麦粉を再使用
潜入取材が暴く数々の闇

 こうした「潜入取材」は中国では珍しくない。実は今年3月、中国中央電視台(CCTV)の報道番組でも、食材の消費期限改ざんの闇が暴かれたばかりだった。

 CCTVは「世界消費者権利デー」に当たる3月15日に特別番組を放送した。それは、杭州の食品貿易会社に複数の記者が潜り込むドキュメンタリーだった。取材班は正面から入社試験を受け、通過し採用された。従業員になりすました記者らが工場への出勤を始めると、ほどなく周囲から信頼を得るようになっていった。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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