ボストン コンサルティング グループのCEOリッチ・レッサー氏は、昨年のスイスの「ダボス会議」に際し、現代の各国のリーダーや企業経営者は四つの課題に直面していると語った。その課題は今も継続している。レッサー氏が来日した機会を捉えて、四つの課題とその対応について聞いた。この課題に対処するには、企業風土・文化の刷新が必要だとレッサー氏は説く。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎、編集部 小尾拓也 構成/安田有希子)

ビジネス環境の「グローバル化と
コンピュータ・テクノロジーの発展」

――現在、先進国のリーダーや企業経営者が直面している「四つの課題」について、具体的にその内容を聞かせてください。

リッチ・レッサー
ボストン コンサルティング グループCEO。2013年1月より現職。ニューヨーク、北京にオフィスを構える。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)を経て、1988年にボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)に入社。2000 年から09 年までBCGニューヨーク・オフィス代表、09 年から12年までBCG南北アメリカ地域代表を歴任。06 年よりBCGエグゼクティブ・コミッティ(経営会議)のメンバー。ミシガン大学工学部卒業(化学工学専攻)、ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。
Photo:DOL

 まず一つ目は、新興国の台頭によるビジネス環境のグローバル化です。新興国の成長スピードは、最近は減速傾向にありますが、その勢力が世界経済を再形成する力の一端であることには変わりはありません。

 数年前まで、世界経済は低成長が続く先進国と高成長の新興国とに二分された「二速経済(two speed economy)」であると言われていましたが、現在では、「マルチ・スピード経済」と言うべき様相を呈しています。新興国で成長ポテンシャルや予想成長率のバラつきが国により非常に大きくなっているのみならず、先進国の環境も多様性を増しています。複数のシナリオが同時進行し、事業環境はより複雑さを増していると言えるでしょう。

 そのために各国の経営者は、自社の今後の成長に向けて、どんな戦略を取るのか、優先課題は何か、何に投資をしていくのか、という課題を特に深く検討する必要があり、思慮深い判断が求められる厳しい局面にあると思っています。

 二つ目は、テクノロジーの一層の発展です。今までテクノロジーと関連が薄いとされてきた業界において、テクノロジーをテコに業界全体をどのようにして再構築していくか、ということが重要になってきます。テクノロジーの役割には、大きく分類して3つの側面があります。

 まず、モバイル、つまり携帯可能な通信システムの利用頻度を高めている消費者に対して、いかにデジタルを通じた創造的な製品やサービスを提供していくか、ということ。