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長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

たくましき女性作家に学ぶ脂質の取り方

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第5回】 2014年8月12日
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 根拠があるわけではないが、作家は短命というイメージがある。芥川龍之介が35歳、太宰治は39歳、自ら命を絶っていることも個人的な印象を強めている。

 しかし、女性作家はなかなかに元気だ。齢90を過ぎてなお執筆欲旺盛な瀬戸内寂聴先生をはじめ、今回とりあげる宇野千代と、たくましい女性が多い。

※享年(数え年で表記)
イラスト/びごーじょうじ

 宇野千代は大正、昭和、平成という3つの元号にまたがって活躍した作家である。同じ作家の尾崎士郎をはじめ、梶井基次郎、画家の東郷青児、編集者の北原武夫などと、恋愛や結婚、離婚を繰り返したことでも知られる。また、着物デザイナーでもあり、実業家としての顔も持ち合わせていた。小説家としては寡作だったがエッセーなどを数多く残し、98歳で亡くなるまで、その人生はエネルギーに満ちていた。

 宇野千代には『私の長生き料理』というそのものずばりの著作がある。そこには一見すると普段着の和食が並ぶ。

 「よく考えてみますと、料理の好みの中にも、実は人間の性質がはっきり現れるもののように思えるのですね」

 「わたしという人間は(中略)味も年に似合わず、しつこいものが好き。(中略)これも自然の欲求でそうなっているのでしょうか。今でも炒めものが好きですし、煮ものもちょっと油を通してから煮るというようにして、コクのある味が好きなのです」

 この言葉の通り、彼女は脂質の取り方が巧みだった。抗酸化物質を多く含む太白のごま油を用い、さらには豚肉を入れた酢の物をはじめ、牛の脂入りのおからなど考案した料理も多彩だ。

 余談だが、彼女の有名な料理に『極道すき焼き』がある。名前からしてすごいのだが、作り方も迫力満点だ。まずはなるべく上等の(百グラム3000円以上の)和牛の肉を用意する。他の材料は卵黄、少々濃い目の割り下、ナポレオン級のブランデー、太白ゴマ油だ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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