2014年4月からの診療報酬改定を点検しながら、厚労省の目指す医療改革の道筋を追ってきた本連載。今回取り上げるのは、診療報酬改定とは別に決着した、もう一つの新しい医療改革、つまり「混合診療の導入」である。

 国は6月24日に、新たな成長戦略にあたる「日本再興戦略改訂版」と「規制改革実施計画」を閣議決定し、医療分野で混合診療を大幅に拡大する「患者申し出療養」を新たに設けた。15年の通常国会に関連法案を提出し、16年度からの実施を目論む。

 混合診療の解禁については、規制改革に熱心に取り組んだ小泉政権ですら、日本医師会(日医)や厚労省などの「安全性や有効性が疑わしい医療が広がる。患者に不利益」という反対論を突破できなかった。長年にわたる重要課題である。その分厚い障壁を、規制改革会議(議長:岡素之・住友商事相談役)議長代理で政策研究大学院大学教授の太田弘子さんは農業、雇用と並ぶ「岩盤規制」と名付けたほどだ。

 経済成長路線をひた走る安倍政権は、新薬や医療機器の開発が市場の拡大につながり、さらに政権の推進力になると見て、かなり強引に新制度を組み立て、混合診療への扉を開いた。「私が岩盤を破る強力なドリルの強い刃になる」と決意を語る安倍首相のちからづくの采配は尋常でない。

日本では原則禁止とされた
「混合診療」とは一体なに?

 混合診療とは、公的保険が適用される保険診療と患者が自己負担で受ける保険適用外の自由診療を組み合わせたものだ。日本では原則禁止である。

 近年、治療の際に抗がん剤が効かなくなったため、海外では承認されているものの日本では未承認の薬で保険外治療を受けたいと希望するがん患者は多い。

 しかし、もしその保険外治療を実行すれば、保険外治療の費用だけでなく、その他の検査や入院代など保険診療の費用も全額負担しなければならなくなる。保険適用外の診療や薬が規定の用量を超えても同様だ。結果として高額な医療費となり、治療を諦める人も出て来る。混合診療の禁止は、患者に懲罰的な意味合いを持つ。

 安全性や効果が確認されない限り、医療保険料や公費を使わない、という国の原則があるからだ。

 原則の例外として、小泉政権が2006年に一部先進医療を混合診療として認めた「保険外併用療養費制度」がある。その中身は「評価療養」と「選定医療」に分かれる。評価療養とは、厚労省が安全を確認し、将来の保険適用を目指す先進医療など7種類を指す。新薬の研究開発が前提であくまで研究第一主義に立つ。複数の患者がいて、医師が希望しないと実施されない。

 血管再生治療やがんの重粒子線治療など約100技術が指定されているが、あらかじめ認められた治療法など厳しい制限付きだ。加えて、治療を行うまでに審査期間が3~6ヵ月と長く、実施医療機関も少数に限定されている。1つの治療で平均10ヵ所の医療機関に止まり、疾病によっては全国で1つしかないこともある。ただ歯科診療は普通の診療所と変わらないがこの制度に入る。高額な金合金の義歯を選んでも他の治療は保険が効く。

 一方の選定医療は、差額ベッドや大病院の初診料、予約・時間外診療などで、将来の保険適用を前提としてない、いわば特殊な上乗せサービスだ。