ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野中郁次郎のリーダーシップ論 ― 史上最大の決断

【特別版】日本の敗戦から69年目に想う<後編>

野中郁次郎 [一橋大学名誉教授]
【第10回】 2014年8月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

『史上最大の決断』の発売から2ヵ月が過ぎた。この間、3回の増刷を重ねることができたのは、読者のみなさんのご支援があってのことと深く感謝している。69回目を迎えた8月15日終戦記念日にあたり、第2次世界大戦を振り返る「日本の敗戦から69年目に想う」後篇は、あらためてアイゼンハワーのワイズ・リーダシップについて考えてみたい。

非民主主義国家の手法

 連合国、と一口に言っても、ソ連と中国という非民主主義国家が含まれている。大戦後のこの2国の政策は、民主主義国家のそれとはかなり違っていた。

一橋大学名誉教授 野中郁次郎

 最近、中公新書から『スターリン「非道の独裁者」の実像』が出版された。

 『史上最大の決断』ではソ連側の話にあまり触れることができなかったが、この本を読むと、ソ連のリーダーによる強烈な農民への搾取、抑圧に言葉を失う。農民の餓死という犠牲を顧みずに、工業化を徹底していった凄まじさ。そうして培われた工業力があってこそ、ソ連は大戦後半においてもT-34のようなものすごい戦車を量産し続けることができたのだろう。

 大戦前に、スターリンは赤軍の幹部を粛清した。まるで更地に戻すかのような熾烈な粛清により、抵抗勢力になりそうな幹部は一掃された。そして、その後に登用されたジューコフのような若手の将校が近代戦に適応していったのである。

 こうした非情とも思える徹底的な構造改革は、毛沢東が第2次大戦後行った大躍進政策や文化大革命もそうだった。すべての伝統的な階層を取り壊すかのような構造改革の過程を経て過去のしがらみが一掃され、結果として、鄧小平の時に市場経済の導入などの政策を実現できる自由度が確保されたのだという指摘もある。

 第2次大戦後、ソ連と米国は冷戦となり、世界は核戦争の恐怖におびえることとなった。その後、紆余曲折を経て、1991年にソ連は崩壊し、米国の独り勝ちとなるかに見えたが、今では中国と米国が対立する構造ができつつある。かつての同盟国とはいえ、その関係は常に変化している。その変化を察知し未来を描くのが歴史的構想力なのだが、はたして現在の世界のリーダーたちはどのくらいの深さと広さで過去と未来とを見ているのだろうか。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野中郁次郎 [一橋大学名誉教授]

1935年東京生まれ。早稲田大学特命教授。58年早稲田大学政治経済学部卒業後、富士電機勤務を経て、カルフォルニア大学バークレー校経営大学院博士課程修了(Ph.D)。南山大学、防衛大学校、一橋大学、北陸先端科学技術大学院大学、一橋大学大学院国際企業戦略研究科で教鞭を執る。紫綬褒章、瑞宝中綬章受章。知識創造理論の提唱者であり、ナレッジ・マネジメントの世界的権威として、米経済紙による「最も影響力のあるビジネス思想家トップ20」でアジアから唯一選出された。さらに2013年11月には最も影響力のある経営思想家50人を選ぶThinkers50のLifetime Achievement Award(生涯業績賞、功労賞)を受賞。近年は企業経営にとどまらず、地域コミュニティから国家までさまざまな組織レベルでのリーダーシップや経営のあり方にも研究の場を広げている。主な著作に、『失敗の本質』(ダイヤモンド社)、『アメリカ海兵隊』(中央公論新社)、『知識創造企業』(東洋経済新報社)など。

Facebook「史上最大の決断」


野中郁次郎のリーダーシップ論 ― 史上最大の決断

『失敗の本質』から30年。経営学の世界的権威・野中郁次郎が、リーダーシップ研究の集大成の対象に選んだのは、「凡人たる非凡人」にして第2次大戦の活路を拓いた連合軍最高指揮官アイゼンハワー。「史上最大の作戦」で発揮された意思決定(Judgement)の本質を説く。

「野中郁次郎のリーダーシップ論 ― 史上最大の決断」

⇒バックナンバー一覧