米国の金融大手・シティグループの日本法人であるシティバンク銀行が、リテール(個人向け)業務を売却する方向で動き始めた。預金量は約4兆円。中堅地銀並みの規模を持つ同行の顧客はたくさんいるはず。今後、サービスはどうなるのか?面倒な手続きをしなければならないのか?顧客目線での疑問を整理してみよう。(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

海外サービスの継続は不透明
面倒な手続きが発生する可能性も

 邦銀の個人取引は預金や給与口座、住宅ローンなどの取引が大半を占めるが、、外資系銀行は外貨預金や資産運用など、幅広い金融サービスを持つ点が魅力だ。2000年代から外資系銀行のリテール(個人)業務上陸が本格化し、中でも多数の顧客を集めることに成功したのが、シティバンクだった。

中堅地銀並みの規模の外資が日本から撤退する。前代未聞の出来事だ

 現在の日本国内の拠点数は33。預金量は約3兆8000億円にも積み上がった。これは中堅地銀並みの規模だ。しかし、規模が拡大した一方で内実は赤字。そして8月、とうとうリテール業務を邦銀に売却する方向で動き出した。果たして邦銀に売られた場合、シティバンクに口座を持つ顧客はどうなるのだろうか?

 まずは、シティバンクの一番の強みである海外サービス。シティに口座を持てば、世界の200以上の国・地域に旅行した場合、現地の現金自動預払機(ATM)で現地通貨を引き出せるなど、国際取引が充実している。海外出張が多いビジネスマンや旅行好きな人がシティバンクの顧客層に多いのはこのためだ。しかし残念ながら、邦銀に引き継がれた場合、もっとも先行きが不透明なのが、このサービスである。

「シティのシステムから、リテールを切り離して移管してしまえばアウト。切り離さない形式なら、引き続き利用できる可能性もある」。業界関係者はこう話す。また、無事に海外ネットワークを使えることになった場合でも、手数料がこれまで通りかどうかは疑問だ。

 いわゆるATMの「自行扱い」と「他行扱い」では、手数料が変わる。ATMを運営していくにはコストがかかる。他行のお客さんからは、たくさん手数料を取らなければペイしないのだ。しかし、邦銀に売られてしまうことで、シティグループ本体からすれば、「他行のお客さん」ということになる。