女性の管理職はなぜ少ないか

「経営者や男性管理職が意識を改めなければ女性の管理職は増えない」といわれるが、人々の意識を変えるためには現行制度の変革が先決だ。女性管理職が増えれば、人々の意識は自然に変化するが、その逆は困難だからだ。

 女性の管理職が少ないことの主因は、①長期継続雇用前提の年功的な内部昇進、②配偶者が専業主婦の世帯主を暗黙の前提とした長時間労働や頻繁な転勤等の働き方、③専業主婦世帯を優遇する税制や社会保険制度、等がある。これらが夫婦共働きと子育ての両立を困難にしており、管理職年齢に達する前に、多くの女性が脱落する要因となっている。

 今後、人口の減少と高齢化が進むなかで、貴重な女性の労働力の量的な増加だけでなく、その質的な向上をも妨げている社会制度・慣行の改善は、政府の基本的な責任といえる。これに対し、日本の雇用慣行に対して、政府が介入すべきではないという「労使自治の原則」の考え方がある。しかし、市場主義の米国でも、「差別禁止」という大原則に使用者が反した場合には、政府が断固介入する。

 ホワイトカラーの職種について、男女間で基本的な能力差がない以上、女性の管理職が1割に過ぎない日本の現状は、社会制度面での「女性に対する差別」の結果と考えられる。この「差別」という「社会的公害」の是正のために、政府の介入が必要なことは、経済学の入門書にも明記されている。

ワーク・ライフ・バランスと矛盾する日本の雇用慣行

 正社員の雇用安定と、年齢に比例した生活給を保障する日本の雇用慣行は、その代償として、長時間労働や頻繁な転勤等の無定限の働き方とパッケージの雇用契約を労働者に強いている。企業にとって慢性的な長時間労働は、雇用保障のコストが高い正社員数を最小限にとどめるとともに、不況時に削減できる労働時間の余地を高め、雇用を守るための安全弁である。また、労働者にとっても残業代は追加収入の意味を持っている。頻繁な転勤は、事業の再構築や不況時に企業グループ内の雇用流動性を確保する手段であり、幹部候補生にとっては、地方支社や工場等での「管理職研修」としての意味もある。

 こうした正社員の無定限の働き方を支えるために不可欠な存在が、世帯主を支え、家事・子育てに専念する専業主婦である。この意味で「男性は仕事、女性は家事」の性別役割分担は、日本的雇用慣行を支える根幹ともいうべき前提である。また、世帯主の生活給には、「家族ぐるみの雇用」という意味もある。