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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

日本経済復活のカギは産業構造転換の断行
安倍改造内閣・党役員人事で「改革」は可能か?

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第89回】 2014年9月8日
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 「アベノミクス」の先行きに対する悲観的な見方が広がっている。2014年4-6月期のGDP速報値が前期比(年率換算)マイナス6.8%と大きく落ち込んだ。また、2014年上半期(1-6月)の国際収支状況で貿易赤字が過去最大になった。急激な各種経済指標の落ち込みに、「アベノミクスは失敗だ」という海外報道まで出てきている(“Abenomics’arrows fail to hit their mark”を参照のこと)。

 これは、別に驚くことはではないだろう。アベノミクスの「第1の矢(金融緩和)」「第2の矢(公共事業)」は、いずれ効果が切れてしまう、「時間稼ぎ」に過ぎないものだからだ(第51回・P.6を参照のこと)。

 そもそも、円安で輸出を増やして景気回復できるわけがなかったのだ。製造業は既に海外に生産拠点を移転してしまっている。国内に工場は残っていない。少々円安になったくらいで、国内に工場が戻ってくるわけがない。結局、金融緩和や公共事業を「異次元」で打ち出すことは、業績悪化に苦しむ斜陽産業を一時的に救ったに過ぎなかった。その上、将来の借金増というリスクも抱え込むことになった。

 本格的な経済復活のためには、「第三の矢(成長戦略)」が重要だということだ。それには、公共事業を削減して斜陽産業を退場させる産業構造転換の断行ができるかがカギとなる。この連載で以前指摘したように、改革を断行できるかは、党幹事長、総務会長、政調会長の党役員やアベノミクスに関連する閣僚に、族議員を抑える力があるベテランを起用できるかどうかである(第87回を参照のこと)。

「政権交代ある民主主義」で自民党の年功序列崩壊:
「入閣待機組」の希望はほとんど叶わず

 第2次安倍晋三改造内閣が発足した。主要閣僚6人が留任し、女性閣僚起用は過去最多に並ぶ5人となった。一方で初入閣は8人に留まった。60人を超える、入閣候補の年次に達した「待機組」の望みは、ほとんど叶わなかった。

 安倍首相が特別冷淡だったというわけではない。自民党の人事システム「年功序列システム(当選回数至上主義)」(前連載第24回を参照のこと)が事実上崩壊していて、「入閣待機組」に配慮したくでもできなかったのだ。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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