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野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

リバースモーゲッジを介護に活用する

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第13回】 2014年9月11日
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 前回、介護保険の給付に関して資産制約を導入すべきだと述べた。具体的には、一定以上の資産を保有する者に対しては、自己負担率を高めることが考えられる(なお、同様の措置は医療保険についても行なわれるべきである。これについては、後で述べる)。

 これをいかにして実行するかについて、以下に論じることとする。

自己負担分を貸付、
相続税で清算する

 まず、資産制約が必要であることを見るために、「平成11年全国消費実態調査」によって、年齢階級別の資産保有状況を見ると、図表1のとおりである。

 世帯主の年齢が高くなるほど資産合計が増加していることが分かる。金融資産も住宅・宅地資産も増える。住宅保有率は、60歳以上では9割を超える。

 他方で、消費支出は50~59歳をピークに減少する。つまり、高齢者世帯は、「あまり消費しないが、多額の資産を保有する世帯」なのである。

 一方、前回見たように、介護保険の給付の半分は公費によって賄われている。こうした状況を見れば、給付に資産制約を課すことは、世代間公平の観点から必要であることが分かる。

 ただし、資産保有制限を現実に実行しようとすると、資産の流動性が十分でないという問題が生じる。これはとくに不動産について大きな問題となる。多額の不動産を所有していても、居住用資産である場合には現金の収入をもたらさない。高齢者家計の多くは現金の収入を持たないので、自己負担を求められても払えないのだ。

 これに対処するには、つぎの2つの方法がありうる。

 第1は、相続税において調整することである。

 すなわち、現金収入が不十分な場合、自己負担に相当する額は、介護保険からの貸付とする。そして、不動産の相続時において、貸付の元利合計額に相当する額を相続税に上乗せして徴収するのである。

 このようにすれば、多額の不動産を保有する家計は、そうでない家計に比べてより多くの自己負担を負うことになる。

 いうまでもないことであるが、この方式を取る場合には、介護保険制度と相続税制度との連携が必要になる。もともと税と社会保障制度は密接な関連があり、両者の一体的な運営が必要なのである。

 現実の世界では、税を所轄する官庁と社会保障を所轄する官庁が別であるため、このような連携作業がなかなか行ないにくい。しかし、そうした制度的なバリアは克服される必要がある。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

日本社会は、世界でも稀に見る人口高齢化に直面しており、このため、経済のさまざまな側面で深刻な長期的問題を抱えている。とりわけ深刻なのは社会保障であり、現在の制度が続けば、早晩破綻することが避けられない。この連載では、人口高齢化と日本経済が長期的に直面する問題について検討し、いかなる対策が必要であるかを示すこととしたい。

「野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言」

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