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医療・介護 大転換

介護保険まで所得に応じた負担制度に
“年収280万円以上の高齢者”に圧し掛かる2割負担

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第7回】 2014年9月3日
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 今年6月に「地域医療・介護総合確保推進法」が成立し、それに伴う「医療」「介護」の大転換を取り上げてきた本連載。前回からその中でも「介護」改革について検証してきたが、国が進める介護保険改革の中でその根幹を揺さぶる見直しがある。利用者負担の利用料を1割から2割へ引き上げることだ。

制度が始まって16年目
初めての大改革

 これまでは、誰でも利用者は一律に1割負担であった。それを所得が上から20%までの「相対的に負担能力の高い」人たちに絞るように基準を設けて、2割負担の対象とする。経費を少しでも浮かせようという狙いだ。

 一部ではあるが、応能負担の考え方を採り入れ、全面的な応益負担(受益に応じた負担をすること、同じ介護サービスだと同じ1割負担ということ)の基本方針を転換させた。社会保険として「負担は広く薄く」という理想論では済まなくなった。所得に応じて負担を変える医療保険に近づいたと言えるだろう。

 昨年8月に首相に提言された社会保障制度改革国民会議の報告書では「一定以上の所得のある利用者負担は引き上げるべきだ」と記されており、それに沿ったものだ。

 来年の通常国会に提出される介護保険法改正案に盛り込み、2015年8月から実施されそうだ。介護保険制度が始まって16年目にして初めての大改革と言えるだろう。

 引き上げ幅は、医療保険に合わせると「現役並み」収入の70歳以上の高齢者は3割負担となる。だが、厚労省は「1割からいきなり3割は難しいので2割にとどめた」と説明する。

年収280万円以上は2割負担に
世帯収入同じでも負担が異なるケースも

 上位20%の人の線引きは、合計所得金額が160万円以上とした。年収から年金などによる控除を差し引いた所得が160万以上なら2割負担ということだ。自営業者も同様に、経費などを引いた額が160万円以上だと2割負担になる。

 年金収入だけの独居者だと、年金控除は最低120万円なので年収280万円以上(税前)ということだ。280万円の年金給付を得られるのは、現役時代の平均手取り年収が850~900万円(現在価値に換算)、あるいは40歳時点で年収1000万円以上が一応の目安とされる。

 ここで重要なポイントは、世帯全体でなく個人の収入を基に計算することだ。このため、夫婦の年金額などで収入が違えば、それぞれ2割負担と1割負担に分かれることもある。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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