2004年末に信託業法が改正され、金融機関以外の信託参入が認められた。だが、解禁第1号となったジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC)の経営が、早くも崖っ縁に立たされている。

 JDCは、アニメや映画などの知的財産権を信託財産として預かり、その受益権を一般投資家に販売。集まった資金で映画などを製作した後、興行収入やDVD販売などから投資家に収益を還元するという新しい事業モデルを構築した。06年に大ヒットした映画「フラガール」は同社のスキームにより製作された。

 だが、JDCの業績は低迷し、昨年度は四期連続の最終赤字となった。監査法人からは運転資金の確保と増資を求められているが、そのメドが立っていない模様。そのため、今期第2四半期決算の発表を2度にわたり延期する異常事態に陥っている。

 弱り目に祟り目というべきか、今夏には、JDCが投資家から集めたファンドの出資金8800万円を、同社部長(当時)が着服する不祥事が表面化。

  内部管理の杜撰(ずさん)さが露呈し、関東財務局から業務改善命令が下った。今期は1800万円の最終黒字を見込んでいるが、不正流用の補填額を特別損失として計上したこともあり、厳しい状況だ。

 さらに11月18日には同社ナンバーツーで管理部門の担当常務が53歳という若さで逝去。死因は心不全とされたことから、さまざまな憶測を呼んでいる。

 「できれば両手(10億円)、少なくとも5億~6億円の増資ができれば決算を発表できる」(同社)という。決算発表の期限は11月28日。仮に増資できたとしても、事業拡大の道筋は見えず、綱渡りの経営が続きそうだ。また、増資に至らなければ、監理ポスト入りの後、上場廃止の可能性もある。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹 )