旭化成ホームズが運営する専門研究機関「マンション建替え研究所」に寄せられる相談の多くに共通するのは、建物の老朽化と将来の修繕資金に対する強い不安だという。

同研究所の重水丈人(しげみずたけひと)所長は、「計画的に修繕を進めてきたマンションであっても、昨今の急激な工事費高騰により、費用負担が想定を超えて膨らむケースが増えています」と語る。その結果、従来の延長線上で修繕を重ねていくという判断だけでは、将来を描きにくい管理組合も増えてきた。

費用面の制約に加え、判断を難しくしている要因として、区分所有者の構成や価値観の多様化が挙げられる。実際に居住する世帯と、投資目的や相続で保有する所有者が混在する中では、「何をもって最適解とするのか」を共有すること自体が、以前より難しくなっている。

修繕か、建替えか、
それとも売却か

こうした費用面と合意形成の双方に対する危機感は、大規模修繕の2回目や3回目を視野に入れる管理組合が強く持っている。重水所長は、「資料請求の際に『将来の勉強のために』とコメントを添える方が数多く見られ、早めに情報を集め始める傾向が強まっています」と話す。中には将来の建替えや売却を見据えて「解体準備金」の積み立てを始めるなど、具体的な備えに踏み出している組合も存在するという。

再生の手法は、かつての「維持修繕」か「建替え」かという2択から、現在は「敷地売却」を含む多様な選択肢へと広がっている。修繕で当面の維持を図りつつ、どの時点で建替えや売却に踏み切るか。その判断が、管理組合にとってより重要になっている。判断材料の一つとして、重水所長が挙げるのが所有者の居住実態だ。

「実際に住んでいる区分所有者が多ければ多いほど、同じ場所で暮らしを再生したいという意向が強くなり、建替えの方向に進みやすい。一方、投資目的や相続による空き家など、居住していない所有者が多い場合には、必ずしも『再びここに住む』ことを前提とせず、住み替えを含めた選択肢が検討されるようになります」

だが、判断に影響する要素は、所有者構成だけではない。時間の経過とともに周囲をオフィスビルなどに囲まれ、住環境としての魅力が変化している場合には、住宅としての再生にこだわらず、土地の特性を生かした活用を考える方が現実的なケースもあると、重水所長は指摘する。

多様な条件を踏まえて再生の方向性を見極めるには、豊富な実例に裏打ちされた経験が欠かせない。国土交通省が集計した全国のマンション建替え事例(竣工ベース)323件(2025年3月現在)のうち、旭化成グループは47件(約14%)を手掛けており、この分野で最も多くの実績を有する事業者だ。重水所長は、「100戸を超える大規模案件から、20戸に満たない小規模マンションまで、多様なバリエーションを経験してきました。その知見が、新たな相談を受ける管理組合へのアドバイスにつながっています」と語る。

こうした経験の蓄積は、建替えを選択した場合の再生プロジェクトにも反映されている。同グループのマンションブランド「ATLAS(アトラス)」は、法制度の活用や合意形成の工夫、周辺環境との調和など、物件ごとの条件に応じたオーダーメードの再生を特徴としてきた。多様な制約条件の中でも、現実的な再生の形を示してきた点が評価されている。

「建替え」の1択ではない、広がるマンション再生の選択肢アトラス御影山手(兵庫県神戸市)
六甲山の麓に位置する御影山手の歴史と住民の愛着に寄り添い、事業性一辺倒に陥らない建替えとしてグッドデザイン賞を受賞。I型配置や縦動線の分散により、街並みとの調和と居住性を両立させた点が高く評価された。廊下側にも豊かな生活空間を生み出す計画が、質の高い集合住宅を実現している

判断「先送り」はリスク
膨らむ建築コストの現実

特に注目を集めている「敷地売却制度」は、再建が難しい物件における有力な解決策だ。周囲の環境変化で住宅としての再生が困難な場合や、再建費用が所有者の負担能力を超える場合には、敷地を売却して別の場所に住み替える方が経済合理性は高くなる。現在、旭化成ホームズが推進中の案件の約4割で、敷地売却を含めた提案が行われている。

合意形成は簡単な作業ではないが、結論を先送りにすることのリスクは無視できない。建物は時間の経過とともに劣化が進み、修繕コストが膨らんでいく。さらに、建築業界における人手不足や働き方改革の影響で、工期の延長やコストの上昇は今後も避けられない。重水所長は、「工事費が下がる要素が見当たらない現状では、時間を置いても再生の得にはなりません。一歩遅れることが、そのままコスト増に直結してしまいます」と警鐘を鳴らす。

再生に迷う管理組合に対し、重水所長は初動の重要性を説く。「マンションの建替えは一生に一度あるかないかの複雑な事業です。私たちは、方向性が決まる前の勉強会の段階からお手伝いしています」。そのため同研究所では、法改正に対応して刷新した「マンション再生スタートブック」をはじめ、管理組合の検討段階に合わせた資料を提供したり、勉強会、セミナーを開催したりしている。

ハウスメーカーをルーツに持ち、一人一人のオーナーと向き合ってきた旭化成グループは、そのDNAを再生の現場でも発揮している。

CASE 1
都心小規模マンション建替え

アトラス麻布台(東京都港区)2025年10月竣工
 

都心エリアに多く存在する、戸数が少なく合意形成が難しいとされる小規模マンション(1971年竣工・17戸)の建替え事例。従前規模を超える建物が建てにくく、保留床確保が課題となる中、丁寧な説明と継続的なフォローによって建替え決議が成立した。容積率緩和規定を適用することで事業性を確保し、小規模マンション再生の現実解を示した。
 

「建替え」の1択ではない、広がるマンション再生の選択肢

CASE 2
高経年マンション建替え

アトラスシティ千歳烏山グランスイート(東京都世田谷区)2025年7月竣工


マンション建替事業による団地再生。耐震性不足の老朽団地「給田北住宅」(1971年竣工・171戸)で、マンション建替円滑化法による団地容積率緩和が全国で初めて適用された。1万2000㎡超の敷地を生かし、中庭を中心としたランドスケープを有し周辺低層住宅と調和する248戸の低層大規模マンションとして再生した。
 

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築40年マンションの10年後
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●問い合わせ先
旭化成ホームズ株式会社 マンション建替え研究所
〒101-8101 東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビルディング5階
TEL:0120-691-512
https://www.asahi-kasei.co.jp/mansionlab/index.html/