マスマーケティングのノウハウの延長ではもはや対応できない
「コンテンツマーケティング」の時代

 2012年10月、GoogleはYouTubeの動画ランキングについて、クリック回数ではなく視聴時間を重視するシステムに変更することを発表した。この変更の狙いは、SEO(サーチエンジン最適化)対策の巧拙に左右されることなく、ユーザーから真に支持される魅力的な動画をランキング上位に表示することにある。

 YouTubeなどの動画サイトで情報を見つけ、興味を持ち、新たな情報をさらにWeb上で深く探り、そして関連する動画を探す。このような行動を、誰もが当たり前のように繰り返す時代に、「日本ブランド」の多くは、コンテンツの内容よりもむしろ、アクセス数を競うことで、時代に対応し、競合優位性をキープしてきたつもりになっていた。しかしその戦略は、視聴率を指標にしてきたマスメディアの同工異曲に過ぎない。YouTubeの動画ランキングシステムの変更は、多くの企業が、デジタルコミュニケーションにおいては、「視聴率=アクセス数」とは異なる指標を持たなければならないことに気づく契機となったのかもしれない。

 そんな中で注目されるようになってきた考え方が「コンテンツマーケティング」である。「コンテンツ」とは、「Webなどのデジタル上でコミュニケーションする手段」のことだが、広義には、「ブランドの魅力を正しく伝えるためのコミュニケーション情報」と捉えられる。では、「コンテンツ」を活用したマーケティングは、なぜ今になって注目されているのだろうか。

ブランドと顧客の絆を深めるために
極めて有効な「コンテンツ」の価値

 TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアや、YouTubeなどの動画サイトは、従来一部のマスメディアと企業が独占していた「多くの人にリーチできる」という情報発信やコンテンツ制作の特権を、生活者の誰もが使えるインフラに変えてしまった。

 この変化は、生活者にとって、マスメディア以外の情報接触の選択肢が増え、時間の使い方が多様化することを意味する。マスメディアに流れる企業のメッセージをおとなしく一方的に受け取って時間を浪費するよりも、生活者自身が望むものを探し、発信し、対話することに時間を使うようになっているのだ。すでに生活者の多くは、企業が発信する情報も、一般の生活者がアップロードする動画も等価に受け取り、等価に評価するリテラシーを急速に身につけている。