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森達也 リアル共同幻想論

画面には戦車に踏みにじられた子どもの死体が映っていた

森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]
【第81回】 2014年10月23日
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今すぐ行けるならイスラエルに行きたい

 世界のどこに行きたいですかと質問されたとき、まずは迷わずにマダガスカルと答える。世界最小のカメレオンやキツネザルを見たい。マダガスカルは鉱物も有名だ。植物相も他の地域とはずいぶん違う。足腰が丈夫なうちに、絶対に一度は行きたい。

 次はどこだろう。実はバリ島はまだ行ったことがない。アイスランドにも行ってみたい。中央アジアにも惹かれる。

 ……などといろいろ考えるけれど、もしも今すぐ行けるのなら、さんざん悩んだ末に、イスラエルと答えると思う。

 行きたい国というよりも、今のこの時期だからこそ見たい国だ。なぜこれほどに無慈悲なことができるのか。なぜこれほどに自己中心的に振る舞えるのか。なぜこれほどに残忍なのか。いったいどんな人たちが暮らす国なのか。

 でも、もしも行ったとしたら、肩透かしのような感覚を持つことはわかっている。暮らしているのは普通の人たちだ。無慈悲でもなければ自己中心的でもなく、もちろん残忍でもない。何人かは友だちになるだろう。敬虔なユダヤ教徒たち。優しくて穏やかな人たちだ。他人への気遣いも当たり前。

 そんな普通の人たちが暮らす国。でも国家は時として、とても無慈悲で自己中心的で残忍な行いをする。それはイスラエルに限ったことではないけれど、でも今のイスラエルは、その傾向があまりにも大きすぎる。あまりにも無慈悲で自己中心的で残忍だ。

 イスラエル国防軍のガザ地区への今回の攻撃によって犠牲になったパレスチナ市民の数は、最終的に2000人を超えた。特に子どもたちが多い。明白な戦時国際法違反だ。ところが(アラブ世界を別にして)イスラエルを強く諌める国はほとんどない。

 もちろん民間人を標的にするという点では、ハマスのロケット弾攻撃も同じように戦時国際法違反だ。ただしその犠牲はあまりにも不均等だ。イスラエル側の市民の被害はほとんどない。兵器のレベルがまったく違うのだ。

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森 達也 [テレビディレクター、映画監督、作家]

1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。


森達也 リアル共同幻想論

テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る!

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