ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦

「イスラム国」がロシアを救う?
――ウクライナ停戦を巡るプーチンとオバマの思惑

北野幸伯 [国際関係アナリスト]
【第6回】 2014年9月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

ウクライナ政府と、同国からの独立を目指し東部を実効支配する「親ロシア派」は9月5日、「停戦合意書」に署名した。小競り合いはあるものの、現在のところ、停戦合意は大方守られている。8月末、プーチンは、ウクライナ「東部」の独立について語りはじめた。9月に入って、ウクライナ大統領ポロシェンコは、ロシアとの「全面戦争が迫っている!」と叫んでいた。それが、なぜ突然「停戦」になったのか?今回は、「ウクライナ内戦」に関係している勢力、ロシア、ウクライナ政府、親ロシア派、欧州、米国などの意図と現状を解説しよう。

革命からマレーシア機撃墜、そして停戦まで
ウクライナ問題の経緯をおさらいしよう

 ウクライナを巡る欧米とロシアの「代理戦争」は、いくつかの大きな事件を通過してきた。事の発端は今年2月。ウクライナで革命が起こり、親ロのヤヌコビッチ大統領がロシアに亡命した。

 3月/ロシアは、ウクライナ領クリミア自治共和国と
          セヴァストポリを併合。
 4月/ロシア系住民の多い東部諸州が、独立を宣言。内戦勃発。
 5月/ウクライナで大統領選挙が行われ、親欧米のポロシェンコが勝利。
         「革命政権」は、選挙を経た「合法政権」に代わった。
 7月/マレーシア航空機墜落事件発生。
         「親ロシア派の誤爆」との見方が強まる。

 これらの事件を通して、ロシアと、ウクライナ内の「親ロシア派」の立場はどんどん悪化していった。ここまでの詳細は、バックナンバーをお読みいただくとして、その後どうなったのかを見てみよう。

 まず、8月7日、ロシアは欧米への「報復制裁」を実施した。欧米からの食品輸入の禁止である。これは、意外に効果のある制裁だった。日本農業新聞8月25日付は、ロシアの報復制裁の影響について、以下のように報じている。

<ロシア向け輸出額の4割が農産物というギリシャでは、行き先を失った野菜・果実農家が支援を求め、デモを繰り広げている。地元メディアによると、ロシアに輸出されるのは果実だけで16万トン、金額で1億8000万ユーロに達する。>
 <これらの措置によって、EUは経済面で1兆円近くを失い、13万人の雇用が脅かされるという試算も出ている。>

 実際、ロシアのこの措置は、欧州諸国を分裂させた。対ロシア制裁に反対の国が続出しているのだ(ロシア自身も、食品価格のインフレが起こって苦しんでいるが)。

 この報復制裁発動は、ロシアが、本格的に「逆襲」を開始したことを意味していた。そして、このころから、ウクライナ東部の戦況に変化がではじめる。いままでジリ貧で、「降伏間近か!?」と思われていた、「親ロシア派」が突如強くなったのだ。ロシアのテレビでも、「親ロシア派連戦連勝!」のニュースが、毎日報じられるようになっていった。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

北野幸伯 [国際関係アナリスト]

きたの・よしのり/1970年長野県生まれ。モスクワ在住24年の国際関係アナリスト、作家。その独特の分析手法により、数々の予測を的中させている。1996年、日本人で初めて、ソ連時代「外交官・KGBエージェント養成所」と呼ばれたロシア外務省付属「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を卒業(政治学修士)。1999年創刊のメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」は現在読者数3万6000人。ロシア関係で日本一の配信部数を誇る。主な著書に「隷属国家日本の岐路」(ダイヤモンド社)、「プーチン最後の聖戦」、「日本自立のためのプーチン最強講義」(共に集英社インターナショナル)など。


ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦

ウクライナ問題などで欧米に楯突き、“反逆者”となったプーチン・ロシア大統領。しかし、ロシア側から物事を眺めれば、ウクライナ問題で暗躍する欧米側の思惑など、日本で報道されている“事実”とは異なるものが見える。気鋭の国際関係アナリストがモスクワから、欧米vsロシアの真相を解説する。

「ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦」

⇒バックナンバー一覧