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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

「円安批判」への批判
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第150回】 2014年10月8日
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 為替レートは、9月になると1ドル105~110円へと極めて速いペースで円安方向に動くこととなった。企業経営者などからは、この円安に対する批判的な意見が数多く述べられるようになった。

 筆者は、マクロ経済が正常化していく流れの中で、円安のモメンタムが止まってしまうことは、デフレ脱却・経済正常化を考える上ではマイナスと考える。また、現状、円安批判として挙げられている論拠も、よく考えると、産みの苦しみを逃れたいという副作用の問題に思える。

 まず、円安批判の代表的な意見を整理しておこう。

(1)輸入コストの上昇を価格転嫁するのは難しく、企業収益にとってマイナス

(2)円安は内需を冷え込ませる、交易損失を増大

(3)円安は経済的弱者には負担が大きい、格差拡大作用がある

(4)円安誘導を行っても輸出は増えない、メリットなし

 様々な円安批判は、上記の4つの組み合わせ、または変形として語られている。

 確かに、原発が止まり、化石燃料に依存して、貿易赤字を拡大させているわが国には円安メリットは感じにくい。一方の円安メリットも、輸出数量を増やせないことで、企業の固定費負担を軽減させにくく、むしろ変動利益の圧縮を意識させる。輸入物価の上昇は、名目賃金に対して物価上昇率がそれに追いつかず、実質賃金の低下をもたらす。年金生活者の負担増は、収入が増えない点で勤労者以上に重い。

改めて円安メリットを考える

 円安にも円高にも、ともにメリット・デメリットがあることは当然のことである。合理的な発想をすれば、デメリットの部分をどうやってメリットで相殺・減殺していくのかが、課題解決の鍵を握る。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

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