社内の情報系システムで困っているという企業、社内SNS勉強会での混沌とした議論、これらを何度も目にしてきた。社内コミュニケーションの課題が山積にもかかわらず、手を打ちあぐねている企業が多いのが実情だ。そこで、問題を整理して解決の方向性を示す必要性を感じ、昨年のお盆明けから本連載に取り組んだ。

 国内外11社の事例を取り上げ、社員の行動を変え、組織の潜在力を発揮させるコミュニケーションのあり方を探求してきた。結論としては、かなりシンプルなものになったと言えよう。基本をしっかりおさえ、情熱を持ったリーダーシップがあれば、かなりの成果は得られるだろう。もっとも、基本もリーダーシップも、多くの企業にとっては簡単なものではなく、また適切な「準備」が必要ということを忘れてはならない。

コミュニケーション活性化は
まず基盤づくりから

 業務時間の多くは「情報収集」「資料作成」「連絡(メール等)」に費やされ、そのコストは膨大だ。これを意味ある活動にする、あるいは効率化するだけで、経済的な効果は大きい。しかし、情報システムの導入や進歩があっても、こうした作業に時間をとられる状況が改善したという話はあまり聞かない。

 つまり、いたずらに情報システムを導入するのではなく、まず足元の基本から見直すことが先決だ。三菱東京UFJ銀行やP&Gなど事例で取り上げたいくつかの企業にインフォメーション・プラットフォームやエキスパート・プラットフォームを提供している株式会社リアルコムは、「お作法」といった言い方で社内の情報流やコミュニケーションに関わる基本動作を整備することの必要性を指摘している。

 情報システムが無い頃は、資料の作成、書類の整理・更新・廃棄、業務連絡といった情報流に関わる「お作法」が徹底されていたが、情報化が進んだいま、かえって作法は崩れ、状況は悪化している。情報洪水や非効率なプロセスを放置せず、情報化時代に即した新たな「お作法」を組織に浸透させることだ。