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戦略の教室
【第13回】 2014年10月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
鈴木博毅

居酒屋談義はなぜ、実行できないのか?
実現する手段がない目標は無意味である。
軍事戦略とビジネス戦略の大きな2つの違い

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なぜ兵法書を読み込んでも、実際のビジネスで使えないのか? ビジネスパーソンの間でも人気が高い古代の兵法。しかし、そのまま現代のビジネスに応用しようとしても使えないことが多い。なぜか? それは軍事戦略とビジネス戦略の大きな違いを理解していないからだ。今回は戦略の肝となる「目標設定」の重要性について解説する。

優れた戦略に共通する3つのポイント

 孫子、アレクサンダー大王から最新のアダプティブ戦略まで、過去3000年間の戦略を俯瞰した時、軍事戦略とビジネス戦略にはいくつか共通する要素があることがわかります。端的に言えば、次の3つのポイントはどちらの成功にも必要不可欠です。

【成果につながる3つのポイント】
(1)優れた目標(の必要性)
(2)幅広い手段(を見つける能力)
(3)リスクを限定して成果を拡大(そのための計画と実践フィードバック)

 ナポレオンは初期のイタリア遠征では、重要な陣地を巡って戦闘をするのではなく、自軍が数の上で有利になる戦場を求めて、ひたすら移動をしています。ナポレオンは戦闘をする際、局地的でも必ず自軍の数が優勢になることを大目標としていたからです。

 アレキサンダー大王は、洋上の要塞都市テュロスを攻略する際、大船団を創り上げるのではなく、陸から1キロを埋め立てて桟橋にしてしまい、屈強な陸軍で洋上都市を敗北させました。優れた手段を見つけるほど、目標達成は容易になるのです。

(3)には、計画と実践のフィードバックが必要だというのは当然に思えますが、隠れた重要ポイントです。何かに挑戦する際に、リスクと成果のバランスが悪ければ、その挑戦は続けることができないからです。

 太平洋戦争で日米が激突した際、米軍は戦闘機のパイロットに救助訓練を受けさせることで、海上に不時着しても必ず自軍が救助してくれると確信させて戦わせました。米軍パイロットは不時着する寸前まで勇敢に戦い、救助されてまた戦場に復帰ができたのです。

 日本軍は救命装置を装着しない戦闘機で、死ぬまで戦うことをパイロットに要求しました。結果、優れたパイロットの大量損耗(死亡)を招き、戦闘継続が困難になったのです。

 ビジネスにおいても「リスクを限定し成果を拡大」することは重要な課題です。トヨタの生産方式は作りすぎの無駄を省くことで、リスクを限定させていますし、アダプティブ戦略は事前計画の予測を販売上のリスクにしない思想を持っています。

『イノベーションのジレンマ』の著者であるクレイトン・クリステンセンは、新たな市場を切り拓く破壊的イノベーションに成功するためには、小さな機会や小さな勝利にも前向きになれる小さな組織にプロジェクトを任せる重要性を指摘しています。未知の顧客を発見する挑戦を続けるには、リスクを限定できる組織構造が不可欠だからです。

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鈴木博毅 

1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。ビジネス戦略、組織論、マーケティングコンサルタント。MPS Consulting代表。貿易商社にてカナダ・豪州の資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略書や戦争史、企業史を分析し、ビジネスに活用できる新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。顧問先には顧客満足度ランキングでなみいる大企業を抑えて1位を獲得した企業や、特定業界で国内シェアNo.1の企業など成功事例多数。日本的組織論の名著『失敗の本質』をわかりやすく現代ビジネスマン向けにエッセンス化した『「超」入門 失敗の本質』(ダイヤモンド社)は14万部を超えるベストセラーとなる。その他の著作に、『企業変革入門』『シャアに学ぶ逆境に克つ仕事術』(日本実業出版社)、『戦略の教室』(ダイヤモンド社)、『「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法』(マガジンハウス)、『実践版 孫子の兵法』(プレジデント社)、『この方法で生きのびよ』(経済界)、『君主論』(KADOKAWA)などがある。

 


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