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トンデモ人事部が会社を壊す

世紀の悪法が雇用の現場をかき回す(上)
現行派遣法がもたらした雇用崩壊

山口 博
【第9回】 2014年10月21日
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 人事部長間で、「世紀の悪法」という代名詞で語られる法律がある。現行の「労働者派遣法」(以下、派遣法。正式には「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)である。

 そもそも、「派遣労働者の保護」を図るという、法律名称にも記載されている本来の目的を果たしていないばかりか、真逆の影響すら与えかねない、悪法ぶりを解説していこう。

 現行派遣法下にあっては、専門26業務(後に28業務。以下、専門業務)に従事する場合は、派遣就業期間無期限とし、専門業務以外に従事する場合は、就業できる期間制限は3年とされている。つまり、専門業務に該当すれば派遣就業期間は無制限で派遣社員の保護、ひいては雇用安定につながる。逆に専門業務に該当しなければ、期限が限定されたままというわけだ。

ビジネス実態から著しく乖離した
机上の専門業務概念

 しかし、この専門業務の定義こそが、大変なくせ者なのだ。例えば、事務用機器を使用した書類作成は専門業務、その書類の梱包・発送は非専門業務。一度でも梱包・発送業務に手をふれると、派遣就業期間が3年で終了してしまう。書類作成の延長でその書類の発送を依頼すると、「私、発送業務を行うと、契約期間が縛られてしまうので、できないのです」という回答が返ってくることになる。

 専門業務という名称がついていながら、高度な業務は対象外であるという点も混乱を招く。例えば、エクセルによる表作成は専門業務だが、より専門性が高いはずのピボットを使った途端に専門業務から外れる。ピボットを勉強して活用してもらおうと思っても、「ピボットを使うと、契約期間がしばられてしまうので、できないのです」という回答が返ってくるわけだ。

 メインの仕事の後工程にも業務範囲を拡大したり、能力を高めてより大きな貢献したりすることは、社員の能力開発と企業の発展のために不可欠なものだ。派遣社員のスキルアップを邪魔することが、「派遣労働者の保護」になるとは、私には思えない。派遣社員の役割を一定範囲の中に括り付け、現在の正社員の権益保護という別の目的があったと言われても致し方ないだろう。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

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