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『週刊ダイヤモンド』特別レポート

日本を捨てた「青色の職人」 中村修二
――知られざる日本の“異脳”たち(2)
(「週刊ダイヤモンド」2001年6月16日号連載)

岸 宣仁 [経済ジャーナリスト]
2014年10月22日
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青色発光ダイオード(LED)の発明と製品化で、日本人3人の受賞が決まった今年のノーベル物理学賞。本誌では2001年6月、受賞者の1人で米国に渡っていた中村修二・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授に肉迫する連載企画を4回に分けてお届けした。経済ジャーナリスト岸宣仁氏の手によるもので、タイトルは「知られざる日本の“異脳”たち」。ここでは、連載2回目(2001年6月16日号)を掲載する。1回目はこちら

青色発光ダイオード(LED)、青色レーザーの商品化に世界で初めて成功し、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)教授にスカウトされた中村修二。日本を「共産主義の国」と言い切る彼の、渡米に至る長く苦渋に満ちた日々を振り返る。

 中村修二UCSB教授には、今でも忘れられない懐かしい思い出がある。徳島大学工学部の大学院生として、就職活動に臨んだ時のことだ。京都セラミック(現京セラ)の面接試験で、稲盛和夫社長(当時)とこんなやり取りを交わした。

稲盛 「あなたは、今の日本社会の問題点はなんだと思いますか?」

中村 「大学入試です。受験教育と受験競争が一番大きな問題です。日本は子どものころから受験、受験で明け暮れている。教育制度が最大のガンであり、今のような大学入試は廃止しなければダメです」

 口角泡飛ばす勢いで語る中村の主張を、稲盛は黙って聞いていた。いや、中村の激しい口調に気圧されて、二の矢を継ぐのを忘れてしまったかのように、曖昧な返事を返すばかりだった。

 結果は、「採用内定」の通知となって届いた。あとで、採用の理由を聞いて驚いた。「今年は変人であることが採用基準で、ほかはいっさい考慮しなかった」という。中村もユニークだったが、稲盛率いる京セラもユニークだったということか。入社を目前に京セラ入りは辞退することになるが、持説を曲げない中村の真骨頂が発揮された一場面であった。

 この信念はアメリカでの生活が日一日と進むにつれ、ますます確信に近いものになりつつある。話が「大学入試」に及ぶと、舌鋒は鋭さを増した。

 「だれでも子どものころは『パイロットになりたい』とか『昆虫学者になりたい』とか夢があるが、親から『とりあえず大学に入ってから考えなさい』と叱られるのが常で、仕方なく勉強を始める。日本の大学入試は暗記が得意な人を選ぶシステムだから、暗記が嫌いでも入試をパスするために必死で勉強する。ところが、いざ大学に入ってみると、講義は全然面白くないし、入学早々から大学に幻滅してしまう。さらに社会に出ても同じような悩みを抱えたまま、平凡なサラリーマンになることで自分を納得させる。要するに日本というシステムは、夢のないサラリーマンを大量生産する養成所ですよ」

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岸 宣仁 [経済ジャーナリスト]

きし・のぶひと/1973年東京外国語大学卒業、読売新聞社入社。横浜支局を経て経済部に勤務、大蔵省、通商産業省、日本銀行、経団連機械、重工クラブなどを担当。91年読売新聞社を退社、知的財産権などをテーマに執筆。


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