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『週刊ダイヤモンド』特別レポート

日本を捨てた「青色の職人」 中村修二
――知られざる日本の“異脳”たち(1)
(「週刊ダイヤモンド」2001年6月9日号連載)

岸 宣仁 [経済ジャーナリスト]
2014年10月21日
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青色発光ダイオード(LED)の発明と製品化で、日本人3人の受賞が決まった今年のノーベル物理学賞。本誌では2001年6月、受賞者の1人で米国に渡っていた中村修二・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授に肉迫する連載企画を4回に分けてお届けした。経済ジャーナリスト岸宣仁氏の手によるもので、タイトルは「知られざる日本の“異脳”たち」。ここでは、連載1回目(2001年6月9日号)から振り返ってみよう。

ロサンゼルスから一〇一号線を北西に約二時間、全米屈指の保養地として知られるサンタバーバラで、今、ノーベル賞に最も近いといわれる日本人研究者が、次なる目標に向けて第二の人生のスタートを切っている。その人こそ、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の中村修二・材料物性工学部教授だ。日亜化学工業という地方の中小企業で、二〇世紀中には不可能といわれた青色発光ダイオード(LED)や青色レーザー実用化にこぎ着けた実績を武器に、勇躍アメリカに乗り込んできたのだ。

 UCSBは、街の中心部からクルマで一五分ほどの小高い丘の上に開けている。キャンパスの南側には太平洋の青い海が迫り、カリフォルニア特有の抜けるような空の青さともマッチして研究環境は抜群のように見えた。中村の研究室は、正面玄関を入ってすぐの「エンジニアリング2」という建物のなかにあり、中庭に植えられた芝生の緑が目に痛いほどだった。

 インタビューは、のっけからこんなやり取りで始まった。

 「こちらに来てちょうど一年になりますが、住み心地はどうですか」

 「それは最高ですよ。こちらの研究者は、ナイトクラブで遊んでいようが、セスナ機を乗り回していようが、とにかく成果を出せばなんでも許される。この自由が、なんとも言えません」

 話のあいだ中、「自由」という言葉が何度も口を突いて出た。

 「それに比べて、日本は相変わらず社会主義ですか」

 中村が著書やインタビュー記事で、日本を「社会主義の国」と揶揄していたので、そう尋ねてみた。

 「いや、共産主義の国ですよ。こちらに来て自由のありがたみを知れば知るほど、日本は社会主義では足りない、共産主義ではないかと思えてきます。官僚がすべてコントロールして、自由がなくて、かつてのソ連みたいなものです」

 「共産主義の国・日本」を捨てて「自由主義の国・アメリカ」へ――地方の中小企業に二〇年近く勤務した中村は、日本脱出の決意を固めるまでにかなりの時間を必要とした。初めて米国企業からヘッドハンティングの声がかかったのは、青色LEDの実用化にメドのついた後、一九九四年末であった。当時の勤務先、日亜化学からもらっていた給料の倍の提示があり、「それにストックオプションをつけるから、ぜひ来てほしい」と二~三日置きに国際電話がかかり、矢のような催促だった。

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岸 宣仁 [経済ジャーナリスト]

きし・のぶひと/1973年東京外国語大学卒業、読売新聞社入社。横浜支局を経て経済部に勤務、大蔵省、通商産業省、日本銀行、経団連機械、重工クラブなどを担当。91年読売新聞社を退社、知的財産権などをテーマに執筆。


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