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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ノーベル賞受賞者は“孤高の研究者”ではない
日本が学ぶべき「チームを生かす達人」だ!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第4回】 2014年10月20日
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日本人のもつ“資質”は大切な宝、
もっと伸ばす努力が必要

 今年のノーベル物理学賞に、日本人3人が選ばれたのは本当に喜ばしいことです。とくに中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授は、私がカリフォルニア大学の理事時代に、日亜化学工業と発明の対価でもめていた頃、「スカウトしよう」と働きかけたご縁もあります。実際、大学にお招きし、キャンパスを案内したりしました。

 ご存知のように、「今世紀中には不可能」とまで言われていた青色発光ダイオード(LED)を、赤崎勇・名城大教授と天野浩・名古屋大教授が初めて作り、中村教授が実用化につなげました。多くの研究者があきらめて去っても、3人ともコツコツと地道な研究を続けてきたところが素晴らしいと思います。

 日本人のノーベル賞受賞は2012年の山中伸弥・京都大教授に続いて20~22人目、物理学賞では8~10人目になります。アジアでは日本の受賞者数が群を抜いて多い。この日本人のもつ“資質”は大切な宝です。もっと伸ばす努力が必要でしょう。

大研究は一人ではできない。
最強の「チーム力」が不可欠

 私は、国際会議などで国内外のノーベル賞受賞者の方とお会いする機会がありますが、皆さん、総じてとても腰が低く、威張らず、穏やかで優しい人ばかりです。

 それもそのはず、ノーベル賞を受賞するような大研究は、決して1人では成し遂げられず、最強の「チーム」をつくることが不可欠だからです。

 受賞者が講演などで研究成果について話すとき、必ず「I」ではなく「We」と言うのにお気づきでしょうか。それは自分一人の力ではなく、チームあってこそできたことを物語っています。

 山中教授がiPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞された後、講演を聴いたのですが、その際、大きなスクリーンに研究チームに所属している学生一人ひとりの写真を順番に映し出し、それぞれの功績を誇らしげに讃えていました。「この人たちのハードワークがなければ、iPSが世の中に生まれてくることはありませんでした」と。このように感謝の気持ちをしっかり伝えてくれるリーダーなら、きっと部下は自分の役割に誇りを感じ、苦労も乗り越えていけることでしょう。

 一般的に、天才的な研究者というと、“オタクの権化”みたいなイメージがあるかもしれませんね。でも私が知る限り、彼らは共通して人間的な魅力に長け、コミュニケーション上手です。

 多くの研究者が長年、地道な研究を積み重ね、引き継ぎ、ようやくある研究者が世の中を劇的に変えるような成果にたどりついて受賞するのがテクノロジー分野のノーベル賞です。たんに頭がキレる、運がいいというだけではとれるものではありません。

 つまり、ノーベル賞の受賞者は、開発者としての才能があるだけでなく、チームをまとめて動かし、成果を出すというリーダーとしてのスキルも身につけているのです。“チームを生かす達人”といってもいいでしょう。それは賞をとってちやほやされても変わらない。むしろ、その注目をさらに研究の追い風にしようとする戦略家といえるかもしれません。

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齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。

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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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