最近、消費増税で景気が悪くなったことが広く認識されるようになった。そのため、来年10月の消費増税を先送りする考えが出てきている。

 消費増税の弊害をいち早く警告した筆者としては、ようやくという感じだ。

 しかし、まだ消費増税は財政再建のために仕方ないと考える人もいる。そうした人たちに、「増税で財政再建できる」は大間違いで、増税しなくても財政再建できることを示そう。

財政再建の目標とは何か

 まず、実際、小泉政権時代に増税なしで財政再建に成功しかかった実績がある。その時を振り返ると、2001年に「骨太の方針」で基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を掲げた。「プライマリーバランス(=以下PB)」という財政指標が使われ始めるようになったのは、これがきっかけだ。その後06年に11年度PB黒字化目標を掲げた。

 財政状況をたどってみると、03年度のPBは28兆円の赤字で名目GDP比マイナス5.6%だったが、08年度には6兆円の赤字、マイナス1.1%にまで下がった。あとひと息で黒字化できる予定(07年1月の中期試算では、10年度のプライマリー収支はプラス0.2%)だったが、08年9月のリーマンショックで景気が悪化し、黒字化にはならなかった。しかし、11年度目標をかなり上回るペースで再建が進んでいたのだから、7年ぐらいで黒字化できるというのはそれほど非現実的な話ではない。

 そもそもPBを黒字化するだけで財政を再建したと言えるのか、という疑問があるかもしれない。そうした疑問を持つ人は、国の借金(債務残高)は1000兆円を超えていることを言う。財政再建というなら、債務を減らす努力が必要なのではないかと心配する。

 こうした疑問に対しては、財政再建とは何を目標としているのかをはっきりさせておきたい。それは財政破綻を避けることだ。1000兆円という数字は確かに気分を落ち込ませるが、破綻回避という目標の達成に債務全額を返済する必要があるだろうか。私たちは、無借金国になることを目指しているわけではない。

 無借金とまではいかなくても、財政黒字を目標とすべきという人もいるだろう。実際、財務省の首脳はかつて財政収支を黒字にしなければいけないと発言したことがある。2014年度予算を財政黒字にするには税収がどれだけ必要かというと、国債の利払いも含めた全歳出が95兆8800億円だから、現在の税収等見込み(54兆6300億円)では41兆2500億円足りない。過去最高の税収額でも60兆円(90年度)だったから、それを考えると実現が難しそうだ。しかし、財政黒字に転換する必要もない。PBを均衡させれば財政破綻は避けられるからだ。