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安東泰志の真・金融立国論

主要なものだけで10も存在
乱立する官民ファンドはなぜ有害か

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第51回】 2014年10月31日
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第二次安倍政権になってから、いわゆる「官民ファンド」が花盛りである。筆者は、既に政権発足直後の13年1月時点で、『粗製乱造「官民ファンド」の欺瞞』(連載第29回)と題して官民ファンドの膨張に強く警鐘を鳴らしていたが、残念ながら、その懸念は現実のものになりつつある。さすがに最近は、良識あるマスコミからは批判的な記事も出るようになってきたが、政府や銀行に遠慮があるのか、まだ若干腰が引けているようだ。この辺で、官民ファンドの、どこが、なぜ、有害なのか、今一度総括してみることにしたい。

乱立する官民ファンド

 表1は、現時点で存在が確認できる官民ファンドを一覧にしてみたものだ。主だったものだけで、10もの官民ファンドの存在が確認できる。この他に、地域金融機関が官の出資を受けて全国津々浦々に設立している「地域ファンド」を含めると、まさに有象無象の無数の官民ファンドが乱立していることがわかる。その合計出資枠上限は不明であるが、最大手の産業革新機構と地域経済活性化支援機構だけで3兆円程度はあり、すべてを合計すれば4兆円に迫る規模になっていてもおかしくない。しかも、官民ファンドを使う動きはとどまるところを知らない。この秋にも、国土交通省が主導して「海外交通・都市開発事業支援機構」なる1000億円もの規模の官民ファンドを立ち上げるという。

 官民ファンドを使おうとする省庁も、経済産業省・国土交通省・文部科学省・内閣府・金融庁(地域ファンド)など多岐に亘り、どこからも歯止めがかからない状況だ。それもそのはず、その背景を辿ると、本来はこうした支出をストップする立場にある財務省にたどりつく。07年頃から、財務省が一般会計予算の膨張を抑える切り札として、「産投会(産業投資特別会計)」と呼ばれる、NTTやJT(日本たばこ産業)株の配当や売却益を歳入とした特別会計の資金を使って、これらのファンドを作ることを各省庁に提案したというのはすでに定説になっている。本来は国の借金を減らすのに使われるべき資金が、官僚同士のいわば「馴れ合い」によって都合よく使われていると言っても過言ではない。

◆表1 主な官製ファンド一覧(PDF)

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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