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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

カリスマリーダーなき後の崇高な理想と現実
全国で唯一議員報酬を日当制にした矢祭町の「今」

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第116回】 2014年11月4日
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あの「日当制導入」から6年半
行政のスリム化を推し進める矢祭町の今

 福島県矢祭町の議会が2008年3月に議員報酬を日当に変え、日本中を仰天させた。議員自らが月額20万円ほどの議員報酬を、日額3万円に引き下げたのである。議員報酬を日当化にしたのは、全国で矢祭町議会のみ。後に続く議会もなく、今なお唯一の存在となっている。日当制の導入から6年半が経過した矢祭町議会を訪ねてみた。

 「我々は財政改革の一環で日当制にしたわけではありません。結果的に財政改革につながっただけです。そもそも非常勤特別職である議員の報酬は、生活給ではありません。議会活動への対価であって、家族らを養うための報酬ではないはずです」

 こう力説するのは、福島県矢祭町の菊池清文・町議会議長。現在5期目のベテラン町議で、議員報酬の日当化を提案した人物だ。

 矢祭町は人口6250人(2014年9月1日現在)の小さな町だ。「平成の大合併」の真っ只中の2001年に「合併しない」宣言を発し、単独の道を選択したことで知られる。行財政改革を徹底し、行政のスリム化と効率化を必死になって進めていた。

 このため、議員報酬の日当制も行財政改革の一環として踏み切ったものと見られていた。財政的に貧しい町が経費削減のために断行したと捉えられ、疑問の声や批判が寄せられた。

 なかでも猛反発したのが、他所の自治体の議員たちだった。日当化は議会・議員の役割を軽視、ないしは認識不足に基づく愚挙だと白眼視した。議会の力を弱める軽はずみな行為だと断じる議員もいた。

 こうした見方に対し、日当制導入を推進した菊池議長は、「議員は本来、ボランティアではないでしょうか。ボランティアとは志願してやるものであって、報酬はさておきです。そもそも議員活動は、高い報酬をもらわないとできないものなのでしょうか」と、あるべき理想の議員像を語る。

 そして、「(日当制の導入により)議員活動が低下したことはありません」と明言する。確かに議員報酬を高額にすれば、議員の質や仕事ぶりが高まるというものでもない。それは、年間1660万円あまりの報酬と年間720万円もの政務活動費を議員に支給している東京都議会を見れば、誰でも納得できるはずだ。議員のレベルと報酬額は連動するものではない。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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