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生活保護のリアル みわよしこ

厚労省に「最後の良心」を期待することはできるか?
住宅扶助等引き下げに進む財務省の“統計マジック”

――政策ウォッチ編・第84回

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【政策ウォッチ編・第84回】 2014年11月7日
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2014年10月27日、財政審は住宅扶助・冬季加算等の引き下げを強く求める内容の資料を公開した。翌28日、生活保護問題対策全国会議は、厚労大臣等に引き下げ撤回を求める要望書を提出した。

一連の検討の起点となっている“事実”は、歪曲や捏造を含んでいないだろうか? 目的とする方針は、極端な飛躍や誘導を含まない論理によって導かれているだろうか?

「引き下げると決めたら引き下げる」政府と
翌日に撤回を求めた人々

 今回は、2014年10月28日に生活保護問題対策全国会議(以下、全国会議)が厚生労働大臣および社保審・生活保護基準部会の全委員に対して提出した「生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算の引き下げ撤回等を求める要望書」を中心に、政府方針および一部報道の「住宅扶助・冬季加算は引き下げが妥当」とする方針を検証する。

 この要望書は同日、財政審・財政制度分科会の全委員に対しても郵送された。要望書全文は、全国会議のブログに掲載されている。また要点は、全国会議が作成した資料「なにがなんでも生活保護基準を引き下げたい? 欺瞞と疑問だらけの、厚労省データ」に示されている。とはいえ、「ぱっと見」で政府の主張と全国会議の主張のどちらが事実なのかを判断するのは、誰にとっても容易ではないだろう。それでも少しだけ、政府が本当のことを言っていない可能性について考えてみていただきたい。

 その前日にあたる10月27日、財政審・財政制度分科会において、年金・生活保護・障害福祉・文教にわたる引き下げ方針が議論された(配布資料)。このところ物議をかもしている「小学校のクラス定員を35人から40人に戻す」という提案も、この分科会で行われた。

 障害者である筆者自身は、同分科会に提出された「障害者福祉費用が増大している(ゆえに、引き締めが必要)」とする根拠不明のグラフ(配布資料30ページ)に、背筋が凍りつく思いである。おそらくは何らかの操作が行われて「増大している」というグラフが示されているのであろう。根拠となりうる事実として思い当たるものは何もないからだ。むしろ、この期間に進行していたのは緊縮・引き下げである。

 しかし、生活保護の住宅扶助と冬季加算という、人の生死に関わりかねない目の前の問題を追い続けていると、近未来に自分自身のQOLを蝕むであろう障害者福祉の問題にまで手が回らないのが実情だ。既に実施されている生活扶助の平均6.5%の引き下げが「真綿で首を絞める」ならば、住宅扶助と冬季加算の引き下げは「ガーゼで首を絞める」ではないだろうか? その先に目指されているものは、「社会にコストを強いる存在」というレッテル貼りの可能な人々全員を対象とした、緩慢な「皆殺し」なのではないか? 筆者は、それほどの危機感を抱いている。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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