にわかに「解散風」が吹き始めた
専ら重要なのは自民党内と官僚の反応

 安倍首相が消費税率再引き上げを延期して衆議院を解散するのではないか、という予測は、ネット媒体ではすでに書かれていたが、ここ数日、にわかに解散ムードが高まってきた。

 『読売新聞』が11月9日(日)の朝刊一面に、「安倍首相が、来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを先送りする場合、今国会で衆院解散・総選挙に踏み切る方向で検討していることが8日、分かった」と、確たる筋に取材したことを臭わせる記事で書き始め、11月11日(火)には、一面トップで再び政府・与党が年内解散を検討していることを書いた。

 一方『朝日新聞』は、11月11日に3面で、「安倍首相、衆院解散を検討 増税判断めぐり年内も選択肢」と、あれこれのケースについて想定を書いた記事を載せた。失礼ながら、解散に関わる要人のコメントを取れていない印象の記事だ。

 両紙の報道のズレ具合には、何らかの事実の存在を感じさせるリアリティがある。現在、政府筋の情報により深く食い込んでいるのは読売であり、読売が先行し繰り返し報じている情勢から見て、「解散」はかなりの確度で実現性があるのではないか、というのが筆者個人の印象だ。

 今は、閣僚のスキャンダル攻撃も下火になりつつあり、もともと弱体の野党を「解散の可能性」で牽制する必要はない。安倍政権にとってもっぱら問題なのは、自民党内と官僚の反応だろう。

 筆者の思うに、消費税率再引き上げを延期(1年半がいいと思う)するのと共に、今国会会期中のなるべく早い時点に解散して、年内に総選挙を行うアイデアは、経済政策としても適切だし、安倍政権の基盤強化のためにも「戦略的に適切」だと思う(注:筆者は金融緩和政策を支持するが、安倍政権を応援しているのではない)。