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生活保護のリアル みわよしこ

「神様はなぜ背中しか向けてくれないの?」
漫画家さいきまこ氏が描く“壮絶な子どもの貧困”

――政策ウォッチ編・第85回

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【政策ウォッチ編・第85回】 2014年11月14日
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生活保護を正面から主題とした日本初の漫画作品「陽のあたる家 ~生活保護に支えられて~」で話題を呼び、同作品で「貧困ジャーナリズム大賞2014」特別賞を受賞した漫画家・さいきまこ氏が、子どもの貧困を主題とした新連載「神様の背中」を開始している(秋田書店「フォアミセス」誌2014年12月号より)。「陽のあたる家 ~生活保護に支えられて~」が果たせたこと、そして、さいき氏に残った「宿題」は何だったのだろうか? さいき氏は「神様の背中」で何を描き出そうとしているのだろうか?

貧困の成り立ちを描き出す意欲作
さいきまこ「神様の背中」

「神様の背中」第一話(秋田書店・「フォアミセス」2014年12月号)扉絵 (c)さいきまこ

 レディースコミック誌を中心として活動している漫画家・さいきまこ氏(本連載での過去のインタビュー)は、2013年、生活保護を正面から主題とした日本初の漫画作品「陽のあたる家 ~生活保護に支えられて~」を発表し、大きな関心を集めた。作品は単行本化され、現在は2刷が販売されている。また、さいき氏は同作品で「貧困ジャーナリズム大賞2014」特別賞を受賞した。さいき氏は、それらの達成と反響に満足することなく、次の一歩を踏み出している。

 秋田書店のレディースコミック誌「フォアミセス」2014年12月号から連載開始となっている「神様の背中」の主人公は、出産を機に退職した元小学校教員・仁藤涼子だ。臨時採用ではあるものの、12年ぶりに教員として公立小学校の教育現場に復帰し、小学5年生のクラスを担任している。しかし涼子は仕事と家庭との両立に悩む。

 そして担任しているクラスには、ほんの少しだけ注意を向ければ、さまざまな形で「危機」のサインを発している子どもたちが数多くいる。親の目が行き届かず、食事を与えられていないため、おにぎりやサンドイッチの万引きを繰り返す男子児童。学校のプリントに目を通す時間もない母親は、就学援助などの支援制度の存在を知らない。自傷を繰り返す女子児童は、母親とともに生活保護を利用して暮らしている。その母親の生活ぶりは、目を覆うばかりの自堕落ぶりだ。男と遊び歩いている様子をSNSで頻繁に公開しており、周囲には「アルコール依存症ではないのか?」と見られている。

 悩む主人公に、登場人物の一人である養護教諭は、このような言葉をかける。

 「先生、もう知っちゃったんですよ。見ようとしなければ見えないものがあるって。シグナルの発見って、見えなくても『ある』って知ることから始まりますから。それを知った人だけに、助けを求めて伸ばされてる手が見えてくるんです」

 もしかすると、このセリフから2つのキーワードを思い出される方もいるかもしれない。20世紀前半に活躍した米国の精神科医であるハリー・スタック・サリヴァンが “participant observation”“alertness”と呼び、日本の精神科医・中井久夫が「関与しつつの観察」「目ざとさ」と訳したものだ。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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