今回ご紹介するのは『新幹線と世界の高速鉄道 2014』です。東海道新幹線が開通して今年で50周年を迎えます。日本の経済成長を支え続けてきた新幹線ですが、現状はどのようになっているのでしょうか。世界の現状をまとめた、鉄道ファンにはたまらない一冊です。

日本だけでなく世界の
高速鉄道を網羅

 東海道新幹線の開業は1964年、今年(2014年)10月1日に50周年を迎えました。車両の更新と高速化が進みましたが、基本的なスタイルが半世紀変わらないのは、50年以上前のグランドデザインが優れていたからでしょう。

『新幹線と世界の高速鉄道 2014』海外鉄道技術協力協会編2014年9月発行。表紙には「のぞみ」「はやぶさ」などの日本の新幹線はもちろん、世界各国の高速鉄道の写真が並んでいます。

 本書は日本の新幹線の歴史、現状、将来の動向を詳細に解説しているとともに、車両メーカーの動向までおさえています。もっと重要なのは、世界の高速鉄道の歴史、現状、将来の計画、企業動向を網羅していることです。これはほかの鉄道書にない大きな特長です。

 50年前に新幹線が登場し、東京・大阪間を3時間30分で快適に高速移動できるようになったわけですが、当時の日本は、東京や大阪のような大都市を含めても道路の舗装率は低く、水道普及率でさえ1960年の時点で53.4%でした。東京都区内であっても井戸のある家が多かったのです。電気洗濯機や冷蔵庫は1960年代後半に普及しますが、60年代前半では、井戸水を使い、たらいで洗濯していた家庭のほうが多かったわけです。ほとんど江戸時代と変わらない生活でした。

 東海道新幹線の開業は、一挙に日本人を「未来の生活」に送り込んだように感じました。21世紀から振り返ると、あの時代に都市間の高速鉄道を構想した鉄道技術者の慧眼に驚くばかりです。

 そして、日本は新幹線を生んだ国であり、高速鉄道が高度に発達した国として現在も世界に君臨しているような錯覚をおぼえます。