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China Report 中国は今

「世界一の鉄道大国」を既成事実化する中国
日本は“安心安全”を売り込めるか

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第164回】 2014年11月7日
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メキシコ高速鉄道プロジェクトに
三菱重工が応札を「断念」?

 話しは少し前の10月19日にさかのぼる。この日、10月19日、レコードチャイナは「メキシコの高速鉄道プロジェクト、中国企業が唯一の応札者に=日本企業は断念」を見出しに、中国語記事の日本語訳を掲載した。これをヤフーニュースやエキサイトニュースが取り上げ、記事は瞬時に伝播。すると、日本全国の鉄道ファンから失望の声が上がった。

 「メキシコは安全性より価格を取ったのか」――。

 記事はメキシコシティ~ケレタロ間高速鉄道国際競争入札の結果を伝えるもので、「日本の三菱重工、フランスのアルストン、カナダのボンバルディア、ドイツのシーメンスも入札を検討していたが、最終的には断念した」と報じられた。

 自称“乗り鉄”の友人にこの話題を向けると、電話の向こうから「ああ、それねえ……」と苦しそうな声が返ってきた。ニュースは彼の聞き及ぶところでもあり、「中国が唯一の応札者になったということは、安さ以外に理由はない。日本が入札断念したのは、メキシコ側がすべて価格で決めるとわかっていたからだろう」と解説を加えてくれた。

 一方、時期をほぼ同じくして、日本では10月20日、「海外交通・都市開発事業支援機構」が発足した。鉄道や高速道路などのインフラ輸出に官民連携で取り組もうと、いよいよ本腰が入ったのだ。だがそんな中で流れた「断念」というニュースは、決して幸先のいいものではない。世界の市場が最後には安全性ではなく価格を取るとしたら、高コストと言われる日本勢にとって勝負は見えているからだ。

 本当に三菱重工は「安い中国」に負けてしまったのだろうか。ことの次第を三菱重工の広報に問い合わせると、意外な答えが返ってきた。

 「メキシコで高速鉄道の計画があるということは知ってはいるが、当社としてフォローはしていません」

 「断念」もへちまもない。記事は事実に反していたのだ。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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