ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

満足には程遠い88兆円予算案
雇用と実需を生むインフラ整備を急げ

町田 徹 [ジャーナリスト]
【第58回】 2008年12月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 クリスマス・イブの24日、麻生太郎内閣は、総額88兆5480億円(当初予算ベースで前年度比6.6%増)という過去最大規模の一般会計を柱にした2009年度の政府予算案を決定した。2008年度の第2次補正予算とあわせて、年明けの通常国会に提出する方針だ。

 今回の予算や税制改革は、一般歳出規模を過去最大に膨らませることによって、個人消費、企業の投資、純輸出の落ち込みで一段と深刻化する経済に歯止めをかけようとするものだ。具体的な中身の面でも、低炭素(CO2)社会の構築によって地球環境の保護を目指す企業の支援など、それなりにユニークな試みを盛り込んだ。

 ところが、それらの数少ない長所はまったく目立たず、正当な評価を受けていない。考えて見てほしい。今回の予算案が、国民にとって、魅力的なクリスマス・プレゼントに映ったと言えるだろうか。

 低い評価の原因は、麻生太郎首相の不人気や定額給付金に代表される「ばら撒き」「無駄遣い」への不信感だけではない。より大きな原因として、政府のこれまでの対応や施策が、散発的で場当たり的なものの域を出ていないのではないかとの懸念が根底に存在するはずだ(これが、単なる「懸念」ではないとのご批判もあろう)。

 こうした中で、今、何よりも必要なのは、「100年に一度」と言われる世界的な危機を克服するための明確な処方箋、あるいは、分かり易いロードマップである。そこには、財政、金融、規制、産業、通商、競争政策などを総動員する覚悟を示すことが大切だ。特に、最も力強い即効薬となり得る財政においては、決して従来型の効果の薄い公共事業を復活させないという決意を表明したうえで、新たな高齢化社会や低炭素社会作りに役立ち、かつ乗数効果の高い、インフラの整備を通じて、雇用や実需を生み出す戦略を示すべきなのだ。そして、その着実な実行を公約することが求められているはずである。

 政府・与党にその能力がないと思うならば、野党・民主党がその案を出してもよい。あるいは、経済産業省案や総務省案といった個別の省庁案があってもよいのではないか。今こそ、永田町や霞が関、あるいは民間のシンクタンクがそういう構想力を競うべきときである。

 最近の動向から、方向性や着眼点はなかなか素晴らしいが、それだけでは経済のてこ入れという点で効果が乏しいのではないか、という例をいくつか示しておきたい。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

町田徹 [ジャーナリスト]

1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。


経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

硬骨の経済ジャーナリスト・町田徹が、経済界の暗部や事件を鋭く斬る週刊コラム。独自の取材網を駆使したスクープ記事に期待!

「経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”」

⇒バックナンバー一覧