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China Report 中国は今

中国で横行する和牛肉密輸
当局がついに摘発強化に

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第2回】 2008年6月26日
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 「牛肉、中国ではいつ解禁になるんですかねえ」

 日本の食肉業者たちの関心事は今もっぱらこれだ。「昨年香港が解禁したから、次は中国か」と、上海の食品業者に日本からの問い合わせが殺到する。

 中国は日本で2001年に発生したBSEの影響を受け、日本産牛肉の輸入を禁止しているが、上海など大都市では和牛を食べられる店が現実に存在する。上海の金持ちが渇望するのは、霜降りの「舌でとろけるようなうまさ」の和牛。この需要を埋めるのが日中航路を使って行われる密輸だ。

「神戸牛ありますよ」と
耳元でささやかれ

 もちろんこれは和牛に限らない。マグロが正規ルートで本格的に取引きされるようになったのはつい3年ほど前のことだが、大手商社が乗り出し、専門の倉庫を整えと、流通ルートが確立する以前は、現地日本料理店の経営者が自前で買い付け、手荷物や預け荷物で持ち込む「ハンドキャリー」がほとんどだった。日数と関税がかかる正攻法では利益が出ない、ならば自分が往復した方が手っ取り早い――。マグロ、和牛、鯨、馬刺し…、水面下では「日本食の輸出」が非合法にかつ大量に行われているのである。

 上海には600を超える日本料理店があるともいわれているが、06年から目立って「焼き肉」を専門に扱う店舗が増えた。日本人経営者以外にも、「日式焼き肉」の看板を掲げる中国人もいれば、台湾人経営の高級鉄板焼きもある。

 メニューに黒毛和牛とは記入せず「黒毛牛」と表記したり、これと思った客には、「神戸牛ありますよ」と耳元でささやいたりして、それとなく和牛をほのめかす。

 上海の西、外国人居住区に立地するある店では、キロ当たり1500元(約2万2500円)で仕入れた和牛が、1日にして100キロはけるという。ここに出入りする闇業者は日本からキロ当たり9000円で買い付けてくるという。1日の取引だけで135万円の利益を上げることができる計算になる。

 上海市内の銅川路には魚の卸売り市場がある。なんとここは鮮魚だけではなく、輸入牛肉を扱う業者もいる。鮮魚を買い付けに行った日本人が「和牛がぎっしり詰まっている冷蔵庫もあった」と驚くように、日本産牛肉や和牛を手に入れる闇ルートは太く大きくなっていく傾向にある。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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