選挙は政策選択の品評会であると筆者は思っている。政治家がいろいろなビジョンを有権者に語る機会が格段に増えるからだ。
マスコミには統計の素養がない
と同時に、それを報じるマスコミの力量も試される。その観点から見ると、内閣府が8日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)の2次速報について、「下方修正」という記事が各紙の一面にのっていたのは酷かった。
筆者はもう20年近く新聞を読んでいない。ただし、ときたま、テレビ、ラジオなどに出演することがあるが、その時にはその当日の新聞を番組で取り上げる材料として見ることもある。9日、ニッポン放送の16時から「ザ・ボイス そこまで言うか」に出演した。15時頃にニッポン放送のスタジオ入りして、番組担当者から進行スケジュールを聞き、材料を見る。
各新聞一面で報じていた「7~9月期の実質GDP改定値、年率1.9%減に下方修正 速報は1.6%減」という各紙の記事のコピーが用意されていた。
これに対して筆者のコメントは「なぜこんなつまらない記事が一面なのですか」だ。いかに今の経済状況が悪いかの解説を期待していた番組スタッフはみんな怪訝そうな顔をした。
続けて「実質GDPを実額で見ると、7~9月期の二次速報は一次速報より少し上方修正された。ただし、4~6月期も上方修正されたので、7~9月期を4~6月期の前期比でみれば、下がり幅が少し大きくなっただけ」、「データとして一次速報と対して変わらないので、ニュースの価値なし」と言った。
マスコミでは、筆者のような説明はないという。実額で「上方修正」されたのに、前期比で「下方修正」というのはおかしい。前期比の「下方修正」が意味を持つのは、4~6月期の実額が同じ場合であるが、4~6月期の実額も「上方修正」されている。
マスコミが基本的な統計の素養がないというだけの話だ。GDP統計について、内閣府のサイトなど見たこともないのだろう。