昨年の安倍政権の総選挙圧勝で、株価は上がるという、長い目で見た見方がある。ところが、ごく短期の目先をみると、そう一筋縄にはいかないようだ。その典型が、6日の日経平均急落525円安である。
原油安とギリシャ不安と新聞で書かれている。原油安はこれまで先進国によって恵みの雨だったが、最近アメリカで盛んなシェールオイル産業にはかえってマイナスだ。ギリシャもユーロ離脱ということになると、金融危機再燃になりかねないという不安がよぎる。このように、マスコミや市場関係者は、目の前で起こった現象をひたすら追う。マスコミで報道される市場関係者の言葉は、現象面を見ればその通りだろうが、その本質はなかなか見えないだろう。
筆者は経済学者なので、現象面ではなく、その本質を考えるのが仕事である。そして、現実の株価の現象を題材にして、その背景にある経済理論を説明することを、しばしば行っている。経済理論が有用なのは、現実面を見通しよく説明できるだけではなく、将来をよりよく予想することができるからだ。このおかげで、筆者は、目先の短期予測はできないが、長い目で見た将来予測はそこそこの打率だ。
原油価格は1バレル50ドル程度が均衡点
今回も、その絶好の機会でもあるので、将来予測を本コラムで行いたい。結論をいえば、原油安もユーロ問題も根っこには金融政策があり、その動向をみていれば、将来の予測はそれなりに可能だ。現時点では、ほとんどの市場関係者は、この背後にある原理を理解していないので慌てふためくが、そのうち(この時間をいうのはちょっと難しい)、市場関係者もだんだんと理解が進み、たいした事件にならなくなるだろう。
まず、原油安について、現象面の一般的な解説をすれば以下のとおりだ。
昨年6月には100ドル/バレルを超えていたが、今や60ドル/バレル前後にまで下がっている。原油価格は2011年から4年まで3年半もの間、100ドル/バレルを超えていた。この高値はこれまでの歴史でなかったことだ。この間、シェールオイルで供給が増える一方、欧州の景気低迷などで需要が低下気味だった。