江戸料理に和食の真髄を探る
【第1回】 2015年1月15日 車 浮代(時代小説家/江戸料理研究家)

「弁天山美家古寿司」(慶応二年創業)を訪ねて 

江戸前の寿司は、酢飯、寿司ダネ、山葵、煮切り醤油。
この4つのバランスがポイント

「江戸前の四天王」と呼ばれる、鰻、天麩羅、蕎麦、(握り)鮨/鮓/寿司――。これらは全て、江戸の町では屋台をメインに売られていたファストフードで、独自の発展を遂げ、今日では諸外国から見た和食の代表メニューとなっています。

 中でも握り寿司の人気は高く、世界中で店舗数は鰻登りで、生魚を食べない国の食文化までをも塗り替える勢いです。 

 古くは、魚を塩と米飯で長期間乳酸発酵させた『熟れずし』に始まり(滋賀県の「鮒寿司」が有名)、直接酢を使うことで短期熟成で食べられるようになった『押しずし(箱ずし)』が上方で生まれ、やがて江戸時代末期、1カンずつ握ってすぐに食べられる『握りずし』が江戸の町で誕生します。

 今回取材させていただいた、弁天山美家古寿司さんは、慶応二年(1866年)創業。東京都内でも数少ない、正統派江戸前寿司の味を、約150年間引き継いで来られた老舗です。 

 「今は生寿司が主流だからね。うちの寿司は時代遅れなんだよね」と、おおらかに笑う5代目・内田正さんは、寿司の歴史を深く研究され、『これが江戸前寿司』(ちくま文庫)『寿司屋さんが書いた寿司の本』(三水社)という著書も出版されています。

 弁天山美家古寿司のHPには、「江戸前寿司の始祖 華屋与兵衛の流れをくむ「千住みやこ寿司」で修行をした初代 金七が、慶応2年(1866年)に浅草 金龍山浅草寺の鐘桜の下で浅草弁天山みやこ寿司を開店。」とあります。

5代目 内田正さん

 その頃は当然冷蔵庫などありませんから、生のネタをそのまま切って乗せる「生寿司」とは違い、安全に美味しく食べられるよう、煮る、蒸す、茹でる、ヅケ、昆布〆、酢洗いなど、寿司ネタには全て下ごしらえがしてありました。

 酢飯と、仕事を施した寿司ダネ、新鮮な山葵に煮切り醤油。この4つのバランスが寿司の美味さを最大限に生み出し、弁天山美家古寿司の味を決めるのだとか。

 今や5代目の目利きにかなった、新鮮な食材に仕事を施すのですから、「時代遅れ」どころか、こんな贅沢はありません。

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車 浮代

(くるま・うきよ)

時代小説家/江戸料理研究家。新聞、TV、雑誌などで活躍中。著書に時代小説『蔦重 の教え』(飛鳥新社)、『江戸おかず 12ヵ月のレシピ』『今すぐつくれる江戸小鉢 レシピ』(講談社)、『"さ・し・す・せ・そ"で作る<江戸風>小鉢&おつまみレシ ピ』(PHP研究所)等がある。
オフシャルサイト http://kurumaukiyo.com
国際浮世絵学会会員 日本ペンクラブ会員


江戸料理に和食の真髄を探る

健康・長寿にもつながる江戸時代に生まれた料理の数々。和食の原典ともいえる、江戸料理の醍醐味&真骨頂を、各種の老舗に学びます。

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