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吉田恒のデータが語る為替の法則

この程度の米雇用統計の改善では、
利上げ期待はまったく時期尚早だ!

吉田 恒
【第41回】 2009年8月12日
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 8月7日(金)に発表された6月の米国雇用統計が好結果となったため、長引いていたこう着相場から脱出し、米ドル高・円安の動きとなりました。

 ただ、私は、これは目先の米ドル高・円安のクライマックスとなるのではないかと思っています。

 米国の雇用統計の結果が良かったことから、為替相場では、米ドルは対円だけでなく、全面高の様相となりました。これは、米国の早期利上げ期待が再燃し、金利が上昇した影響が大きかったと思います。

 市場金利の中で、基本的に政策金利を反映しているとされるのは2年債の利回りです。それは、7日の米国の雇用統計発表を前後して1.3%まで急上昇していました。

2年米国債

 米国の政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートは、足元では実質ゼロ金利となっています。それを1%以上も上回るというのは、政策金利が早期に引き上げられることを織り込んだ動きと言えるでしょう。

 米国の利上げについて、市場がどの程度織り込んでいるかを探るには、FFレート先物で判断する方法もあります。それによると、2010年の年明け早々にFRB(連邦準備制度理事会)が利上げに動き、そして2010年の年末までには、FFレートを2%まで引き上げることを織り込み始めたようです。

 しかし、これは当然のことなのでしょうか、それとも過剰なものなのでしょうか?

本来ならば、FFレートは
「マイナス5%」であるべき!?

 米国雇用統計の結果に、市場関係者の利上げ期待は敏感に反応します。このことからもわかるように、米国において失業率と金融政策の間には一定の相関性があるようです。

 ある為替アナリストによると、それは「失業率1%上昇=FFレート2%低下」といった方程式に単純化されるそうです。

 8月7日に発表となった米国の失業率は9.4%ですから、4.4%から始まった今回の失業率悪化局面では、その上昇幅は5%となります。前述の「方程式」に基づけば、それは10%のFFレート引き下げが必要という計算になります。

 ちなみに、今回の政策金利引き下げ局面において、利下げは5.25%から始まっていますから、FFレートを10%引き下げるとマイナス5%程度になっている必要があるのです。

 今回、米国の失業率が久しぶりに改善し、そういった中で早期利上げ期待が高まりました。

 しかし、米国の失業率と政策金利の関係からすると、それはせいぜい大幅マイナス政策金利の修正を示唆する程度で、とても「利上げ」につながるものではなさそうです。

 それでは、「利上げ」ができるようになるためには、失業率はどのぐらいまで低下する必要があるのでしょうか?

 「失業率1%上昇=FFレート2%低下」という「方程式」を使うと、FFレートのプラス以上が可能な失業率は7%程度となり、2%まで引き上げるためには6%程度に失業率が低下する必要があるといった計算になります。

米失業率とFFレートの関係

 6月の失業率は9.4%なので、これよりもまだまだ相当低い水準になる必要があると言えるでしょう。

 それでは、米国の失業率が6~7%に低下するのは、いつぐらいなのでしょうか?

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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