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失敗は「そこ」からはじまる
【第2回】 2015年1月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
フランチェスカ・ジーノ,柴田裕之

なぜコカ・コーラは
顧客を裏切る意思決定をしたのか?

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綿密に計画を練り上げてゴーサインを出したはずのマーケティングプランが、まったく逆効果に終わったこと、ありませんか?
「顧客のためにやったはずなのに、なぜ炎上してしまったんだ……」
「丁寧にニーズをすくい上げたのに、まさか裏目に出てしまうとは……」
そう、「顧客のため」「相手のため」を思ってやったことが、相手にとっては「余計なお世話」となって「失敗」してしまうことは案外多いものです。
『失敗は「そこ」からはじまる』でこの疑問に答えた、研究者にしてコンサルタントが、「顧客のため」を思ってやったことが、大ブーイングを浴びてしまったコカ・コーラ社の事例から、どうすれば顧客の本当のニーズを拾い上げて意思決定できるのか、解き明かします。

コカ・コーラが理解しそこなった「強烈な愛着」

 ビジネスでは、顧客の視点を取得したり、彼らのニーズを理解したりしそこなうのは珍しくないし、そのために失敗した製品やプロジェクトには有名なものもある。

 1例を挙げよう。1985年、コカ・コーラ社は自社の主要製品であるコカ・コーラがペプシとのコーラ戦争に敗れるのを防ぐために、思いきった手を打った。15年にわたって、コークの売り上げが横ばいだったのに対して、ペプシは順調に売り上げを伸ばしていたからだ。

この負の流れを逆転させようと、コカ・コーラ社は危険な賭けに出て、コークの味を変えた。「ニューコーク」として知られるようになるこの新製品の味には、発売前のフォーカスグループの調査では、ほとんどの人が好意的な反応を見せたが、一部の人が声高に異議を唱え、フォーカスグループのほかのメンバーに影響を与えて、反対陣営に鞍替えさせた。

 同様に、ニューコークが発売されると、アメリカの北東部では消費者はおおむね良好な反応を示したが、コカ・コーラの本社がある南部の愛飲者の一部が、味の変更にやかましく抗議し、なかには、これは南北戦争の古傷に触れ、北部に対する新たな降伏を表明するものだとさえ言う人もいた。

 やがて批判の波が国じゅうに広がり、コークの愛飲者の多くが、味の変更を、彼ら消費者のロイヤルティ(忠誠心)に対する裏切りと見なすようになった。ボイコットや抗議運動が起こり、コカ・コーラ社には40万を超える苦情の電話や手紙が寄せられた。コークの売り上げが頭打ちになると、コカ・コーラ社は唐突に方向転換し、ニューコーク発売から3ヵ月にもならない7月10日に、もとの味に戻すことを発表した。

 「従来のコカ・コーラへの強烈な愛着――そう、強烈な愛着というのがぴったりです――には驚かされました」

 同社のロベルト・ゴイズエタ会長は、方針の180度転換を発表する記者会見でそう述べた。「コーク・クラシック」の売り上げが急増し、ニューコーク(この時点では、正式にこの名称で売買されていた)の売り上げはがた落ちになった。明らかに同社は、お気に入りの清涼飲料と「コカ・コーラ」ブランドへの消費者の愛着を理解しそこなったのだ

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フランチェスカ・ジーノ(Francesca Gino)
ハーバード・ビジネススクールの経営学准教授(交渉術・組織・市場ユニット)。
イタリア出身。経済学・経営学の博士号(Ph.D.)を持ち、ハーバード大学、カーネギーメロン大学等での講師を経て現職。他にも、ハーバード・ロースクールの交渉学プログラム、及びハーバードの「心・脳・行動イニシアティブ(Mind, Brain, Behavior Initiative)」にも正式に関わっている。
意思決定や社会的影響、倫理観、モチベーション、創造性と生産性などを研究対象とし、経済学や経営学、交渉学といった枠組みを超え、社会心理学、行動経済学、組織行動学など、幅広い研究者と積極的に共同研究を行っている。研究成果を広く一般に伝えることにも注力しており、心理学と経営学の一流学術誌だけではなく、「ニューヨーク・タイムズ」、「ウォールストリート・ジャーナル」、「ビジネスウィーク」、「エコノミスト」、「ハフィントンポスト」、「ニューズウィーク」、「サイエンティフィック・アメリカン」など、さまざまな一般向け刊行物にも取りあげられている。
また、得られた組織行動や意思決定の知見をもとに、企業や非営利団体のコンサルタントとしても活躍している。
マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。
http://francescagino.com/

柴田裕之(しばた・やすし)
1959年生まれ。翻訳者。訳書にジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)、ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト』(早川書房)、アレックス(サンディ)・ペントランド『正直シグナル』(みすず書房)、ジョン・T・カシオポ他著『孤独の科学』(河出書房新社)、マイケル・S・ガザニガ『人間らしさとはなにか?』(インターシフト)、サリー・サテル他『その〈脳科学〉にご用心』、ダニエル・T・マックス『眠れない一族』(以上、紀伊國屋書店)、ポール・J・ザック『経済は「競争」では繁栄しない』、フランチェスカ・ジーノ『失敗は「そこ」からはじまる』(以上、ダイヤモンド社)ほか多数


失敗は「そこ」からはじまる

コカ・コーラ、サムスン、ヤフー創業者……
綿密に計画したはずなのに、
「あの人、あの会社が、なんでそんなことを?」

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綿密に計画を練り上げて意思決定をしたはずなのに、気がついたら違う行動をしていた、という経験はないだろうか?
新しいキャリアを切り拓くために勉強しようと決めたのに先延ばしにし、ダイエットを決意したのに翌日にはサボり、老後のために立てた貯蓄計画は日々の散財でダメになり、顧客ロイヤルティを高めるための新しいマーケティングプランはまったく逆の結果に終わり……。
そう、私たちは往々にして、当初思い描いた計画から「脱線」し、そのせいですぐそこにあったはずの成功を逃してしまいがちだ。そしてその結果にがっかりし、やる気を失ってしまう。

私たちの意思決定は、どうしてこれほど頻繁に脱線してしまうのだろうか?

どうすれば、軌道から外れないようにできるのか?

過去10年、この疑問に答えることに的を絞った研究プロジェクトをいくつも行い、人間心理と組織行動の両方を究めた新進の研究者にしてコンサルタントが、意思決定の失敗の本質、そしてブレずに成功するための「9つの原則」を読み解く。

「失敗は「そこ」からはじまる」

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