ロバート・S・キャプランの名は、ほぼ例外なくいつも、彼の共著者デビッド・P・ノートンの名と、彼らが1990年代前半に共同でビジネス界に送り出した評価システム「バランストスコアカード」とセットになっている。
キャプランとノートンは、四半期の収入や決算数字だけにこだわっていては、企業は総合的で戦略的な視点を持つことができないと説いた。
バランストスコアカードは、企業がそれを用いることによって戦略を的確に描写することができるというまさにその点が画期的な発明であった。このスコアカードは、財務以外の要因(無形財産)が収益にどのように結びつくのかを示してくれる。
現状を評価し将来への原動力を明らかにすることにより、スコアカードは企業業績の測定とモチベーション向上という両方の役割を果たす。
キャプランとノートンはバランストスコアカードを完成させる過程でさまざまな企業を調査し、発表以来このツールを取り入れる企業の数は増えている。
人生と業績
ロバート・キャプランは、ボストンのハーバードビジネススクールのリーダーシップ開発のマービン・バウアー記念教授である。彼は以前カーネギーメロン大学を本拠地としており、ピッツバーグにある産業経営大学院の学部長を務めていた。キャプランは、活動基準原価計算(ABC)やバランストスコアカードなどのパフォーマンス計測システムの開発を中心とした研究活動を行なっている。
デビッド・P・ノートンは、マサチューセッツ州リンカーンに拠点を置くバランストスコアカードコラボレイティブ社の創設者兼社長である。また、バランストスコアカードに関するコンサルティング会社ルネッサンスソリューション社も創設し、社長を歴任した。
彼ら2人は共同でバランストスコアカードの概念を普及させた人物として認められている。彼らの手法は1992年の「ハーバードビジネスレビュー」の論文で初めて紹介された(「新しい経営指標“バランスト・スコアカード”」(The balanced scorecard: Measures that drive performance、「DIAMONDハーバード・ビジネス」ダイヤモンド社、1992年5月号)。キャプランとノートンはこの論文の書き出しを、「人は設定された指標によって行動する」(What gets measured gets done)という言い回しをもじった、「指標を設定したものしか得ることはできない」(What you measure is what you get)というフレーズで始めている。