過激派組織「イスラム国」による日本人人質テロ事件は2月1日に最悪の結末を迎えた。
結果として残されたのは、(1)日本人2人が殺害されたこと、(2)「イスラム国」の脅威と存在感が増したこと、(3)日本が明確な標的に加えられたこと、(4)安倍晋三政権が一段と対決姿勢を強めたことだろう。
「イスラム国」の術中にはまったか?
おそらく「イスラム国」は、昨年、湯川遥菜さんと後藤健二さんを拘束して以来、2人を「イスラム国」のために最も有効に活用できるチャンスをひたすら待ち構えていたのだろう。
そこに安倍晋三首相の中東歴訪と言う絶好のチャンスが到来した。そして、「イスラム国」の周辺国に2億ドルの人道支援を打ち出したのである。
常識が通用しない「イスラム国」が経済支援、人道支援であっても敵対国を助けるための政策と受け止めることは明白だろう。とにかく不用意で無防備であったそしりは免れない。「イスラム国」は、何らかの“口実”があればそれでよかったのである。
なぜこれほどに不用意で無防備であったのか。既に野党からその動きが出ているが、2人の拘束以来の徹底した検証がどうしても必要だ。政府による検証委員会、あるいは野党による検証委員会はもちろんだが、民間や市民による検証委員会も期待される。全野党による検証ができなければ野党各党が独自の検証をして国民に公表すべきである。
特に、2人の拘束、パリのテロ事件、「イスラム国」の窮迫など、事件が起きやすい状況が生まれていたはずだ。外務省内の一部からは中東訪問を不安視する声も聞かれたという報道もあった。それに2人の「イスラム国」入りに政府は警告を発したという事実も明らかにされた。その辺の経過が明確にされなければ、日本の外交に対する国民の信頼が大きく揺らいでしまうだろう。
海外の日本人の不安が高まっている
首相は1日の朝、怒り心頭に発したのだろう。「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わせる」と強調した。思わず「そうだ、そうだ」と肯いてしまいそうな発言だ。
だが、この発言はわれわれの国民感情には合致しているものの、はたして他への影響も十分に考慮しているのかと心配になった。聞きようによっては力による復讐の決意表明にも聞こえるからだ。「イスラム国」からは宣戦布告とも受け取られかねない。自分たちの都合に合わせて曲解する「イスラム国」に対しての発言は慎重過ぎるほど慎重であってもよいはずだ。