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柏木理佳 とてつもない中国

胡錦濤体制が続く限り、もはやチベット問題は抑えきれない

柏木理佳 [生活経済ジャーナリスト]
【第6回】 2008年3月25日
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 チベット問題で、共産主義が足音を立てて崩れている。

 近年、チベット自治区ラサでは小規模なデモが繰り返され、弾圧が行われている。今回のチベット問題は、これまで中国国内では抑えられてきた小規模デモに対する弾圧が、チベット自治区では通用しなかったことが明らかになった。

 今回、中国政府にとって手痛かったのは、3月16日までの党大会の時期を狙われたことだ。日頃、中国政府がもっとも緊張するのは、党大会(日本の国会)にあたる時期である。大事な党大会中にデモが発生、拡大することは、胡錦濤国家主席にとって失脚にもつながる大変な失敗である。北京五輪前で世界が注目しているこの時期、しかも党大会の時期を選んで、チベット側は長年の胡錦濤への恨みを爆発させたのである。

チベット弾圧が評価され
出世街道を上り詰めた胡錦濤

 チベット側の胡錦濤への恨みは、1989年に遡る。その年、チベットではチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世らによるデモが発生した。そのデモを沈静化し、チベット支配を強化するために、自治区の共産党書記として派遣されたのが、胡錦濤である。戒厳令を敷く弾圧政策を実施して、反乱を鎮圧したことで胡錦濤は出世した。今、国家主席にまでのしあがったのは、チベットの民族独立を阻止し、支配を強めたことが手柄となっているからだ。そのため胡錦濤は、反省や融和の意向を示すよりも、むしろダライ・ラマを批判し続けている。今さら反省の意を見せては、1989年以来のすべての行動に対して謝罪しなければならなくなるからである。

 近年、ダライ・ラマは香港型の一国二制度を提案していたが、これが中国中央政府に拒否されたことが現在のデモや反政府活動の強化につながった。ダライ・ラマはこれを国際問題として取り上げられるよう、積極的に欧米を訪問していた。

 アメリカを味方につけ、国際問題になれば、チベット側に有利になる。しかし実際にそうなれば中国にとっては、台湾独立にも繋がっていく危険がある。なんとしてでもチベットの反乱を鎮めたいところであった。ところがデモを抑制できないばかりか、弾圧によりデモに関係のない女性や子供などの死者まで出す始末である。

 一方、中国政府が話し合いの場を持たなければ、ダライ・ラマは退位すると明言している。そうなれば、これまでよりも活動家たちは尖鋭化することになる。後継者はこれまでよりも強硬派である。

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柏木理佳 [生活経済ジャーナリスト]

豪州の大学へ進学後、香港にて勤務。1994年、中国の北京首都師範大学漢語科に留学後、シンガポールで会社設立等に携わる。豪州ボンド大学院MBA取得。中国経済の研究員としてシンクタンク勤務後、嘉悦大学准教授。国土交通省道路協会有識者会議メンバーも務める。現在、嘉悦大学付属産業文化観光総合研究所客員主任研究員、北東アジア総合研究所客員研究員、NPO法人キャリアカウンセラー協会理事。2015年、桜美林大学院にて博士号取得。柏木理佳ホームページ


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驚異的な成長の中で、社会や経済の歪みを孕む膨張大国・中国。中国経済の専門家が、日本人には驚きの中国の知られざる現状をレポートする。

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