ついにJT(日本たばこ産業)が飲料事業からの撤退に踏み出した。JTは、2015年9月末をめどに、「桃の天然水」「ルーツ」などの飲料製品の製造・販売を終了する。

主力の2ブランドは現在、譲渡先が見つかっておらず、このままだと今秋にも店頭から姿を消してしまうかもしれない
Photo by Hidekazu Izumi

 2月4日午前に、JTの飲料部隊がある大井町社屋では、社員向けの説明が行われていた。「成熟した飲料市場において、飲料事業がJTの中長期的な成長に貢献するのは難しい」──。大久保憲朗・JT副社長のおよそ40分にわたった弁明は、むなしく響き渡った。その場に居合わせた、JTの飲料事業関係者は「頭が真っ白になった」と戸惑いを隠さない。

 それも無理からぬ話だ。1990年代後半から、JTは“たばこ一本足打法”からの脱却を課題とし、「食品」と「医薬品」を多角化事業の柱と位置付けてきたからだ。収益性の低さから、幾度となく飲料事業の不要論が社内外で浮上したが、13年年初に、「もう一度、飲料事業の再建を目指す」と社内の議論を整理したはずだった。それだけに、「見切りをつけるのが早過ぎる」(JT関係者)という意見も聞こえてくる。

 もっとも、JT経営陣の判断は違ったようだ。撤退に先立ち、昨年夏ごろからJTは販売数量ではなく利益を重視する方針へ転換。傘下のジャパンビバレッジホールディングスの自動販売機における自社製品比率を、7月までの45%程度から8月以降は25%程度へと低下させていたのだ。