「コンピューター界のオスカー」を受賞した
「ふんばろう東日本支援プロジェクト」

 本書の第1章~第4章は、3月11日以降6月ごろまでの西條氏の震災体験を、進行形で綴った物語で構成しています。第5章はインターネット上の「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載された糸井氏との対談を西條氏の視点から編み直したもの。第6章は夏以降、様々な被災地支援プロジェクトがたどった変遷をレポートしながら、どのようにして無給のボランティア3000人が多数のプロジェクトを運営していくことを可能にしたのか、そのノウハウを惜しみなく明かしています。そして第7章は、「無形の型」の組織づくりの秘訣についても具体的に示しています。

 一読すればわかりますが、「ふんばろう東日本支援プロジェクト」のスキームは、今後世界各地で起こりうるあらゆる災害の支援モデルとして役に立ち、誰でもどこでも使えるポテンシャルを備えているといっていいでしょう。そのあたりも含めて評価されたのか、このプロジェクトは2014年、オーストリアで開催されたデジタルメディアの祭典「プリ・アルス・エレクトロニカ」の「コミュニティ部門」において、最優秀賞にあたる「ゴールデン・ニカ」を受賞しました。これまで「WWW(World Wide Web)」や「Wikipedia」といった「世界を変えた枠組み」が受賞しています。「コンピューター界のオスカー」といわれており、世界でもっとも歴史と権威のあるアワードです。

 西條氏は現在、「物資支援プロジェクト」の仕組みをさらにバージョンアップさせて、平時から次の災害に備えようと準備を進めているそうです。