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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

「ご新規3名様!」と案内する店に明日はない

適切な「カテゴライズ」と「ラベル付け」の重要性

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第13回】 2015年2月17日
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常連になっても
「ご新規」と呼ばれる不思議

何度通っても「ご新規様」と呼ばれるはなぜ?
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 ある和風レストラン。「ご新規3名様ご案内です!」と言われて中に通された。味はそれなりに良かったので、何度か行ってみたが、あいかわらず「ご新規○名様ご案内!」と通される。あるとき店員に、「もう5回目くらいなんですけど、どうして“新規”なんですか?」と聞いてみた。すると、どうもクレーマーと認識されたらしく、まともな答えを得られぬまま、reserved のパネルがおいてある良席に通された。

 その後、業界の方にお聞きして、多くのお店ではオペレーション上の事情から、すでに誰かが来ていて遅れて合流する“お連れ様”と、そうではない“ご新規様”の2種類に分けていることを知った。

 「なるほど」とは思うが、それは店都合の分類である。お客様を前にして「あなたの顔なんか知りませんよ(一見さん)」と声高に宣言するのはいかがなものか。“お連れ様”は良いとしても、“ご新規様”でなく普通に“お客様“で十分だろう…。オペレーションの都合などといっても、最初の対応が少し違うくらいだし…などと、ちょっと憤慨しながら、いろんな人に言ってみたが、「そうだ、そうだ」という人は、意外に少ない。「そんな言葉使いを気にする人は秋山さんくらいですよ」と相手にされない。

 しかしながら、私はこだわる。ラベル付けを甘くみてはいけない。言葉は世界をどのように切り取るかの概念分類である。このお店では、最も大事なお客様を、“今日最初に来た人か、遅れて参加する人か、を中心に見ています”、という宣言をしている。接客担当の興味関心は当然そこに集中する。使う言葉は思考を制限するのだ。

 お客様の顔を覚えようなどという意志はまるで持っていないので、顔もろくに見ないし、もちろん覚えない。だから、ご新規様と呼ばれるだけでなく、いつも本当に“新規客扱い”される。お店は、お客様に好きになっていただいて、何度も来ていただけるから利益が上がる。「毎度ありがとうございます」という概念がなく、お客様との繋がりを持ちたくない(と感じさせる)このお店は、今日も駅前で新規客獲得のためのビラ配りをしている。料理は美味しいのにもったいない話だ。

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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